8月29日、伊東CCの経営会社である㈱伊東カントリークラブが民事再生手続きの申し立てを行った。親会社は東証一部上場の老舗造船会社の日立造船。造船業界は空前の好況に沸いているはずなのに、なぜ民事再生なのか。
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どう自主再建されるか、伊東CC
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伊東CC(静岡県)は昭和53年のオープン。相応のステータスは維持しているが、近隣の川奈ホテルGCやサザンクロスCCに比べると、どうしても地味な存在になりがち。
「親会社から派遣されてくる経営者は、親会社からガリガリ儲けようとしなくていい、と言われてくる」(関係者)ほど、おっとりした経営スタンスだったらしい。
現在の会員数は1160名。負債総額39億円のうち、38億円強が預託金だ。
既に平成13年に一度預託金の償還期限が到来、その際は7年延長で乗り切った。
しかし来年にはその期限が再度到来する。
しかも預託金の償還を求めてくることが予想される会員が約320名おり、実際に一部では延長期限の到来を待たずに償還請求訴訟を起こしている会員もいる。
歴史が古いコースだけに、会員の高齢化も進行、スリーピング会員が約500人もいる。これでは来場者も減る一方だ。
そこで会員への公平な対応を行うため、法的手続きに至った、というのが申し立ての理由だ。
親会社の日立造船は「日立造船の支援で自主再建を目指す」といい、つまりは日立造船が従来通り経営権を持ったまま、負債のカットを実施する。
具体的には、日立造船が一定の資金を拠出するスポンサーになる方向で、再建計画を立てて会員に賛否を問う、ということになる。
だが、そうなると「何も民事再生など使わずに親会社が直接救済すればいいのに、なぜしないのか」という疑問もわく。
法的責任がなくても道義的責任で系列コースの預託金の面倒を見る。体力のある超大企業ならよくある話だ。
長年構造不況業種と言われ続けた造船業界は中国関連の需要などで空前の好況に沸いている。
ところが、日立造船はこの恩恵とは無縁なのである。今から約5年前に造船事業から事実上撤退しているからだ。
直近の平成19年3月期決算を見る限り、日立造船は対前年比で営業利益は3倍以上に増加、当期純利益でも前の期の巨額の赤字から黒字に転換。キャッシュも387億円と好調に見える。
しかしわずか5年前には創業以来の本業である造船事業をNKK(現JFEホールディングス)との合弁会社に移し、重厚長大型の事業構造からの転換を余儀なくされるほどの状態だった。
水処理設備などの環境関連の事業を本業に据え、負の遺産の処理を終えてからまだ1年足らず。
債務超過でこそないが、今も100億円を超える繰越赤字を抱え、99年3月期から既に9期間も無配が続いている。
この状況で、法的手続きも経ずに道義的責任だけで預託金の面倒を見ることは、日立造船の株主が許さないだろう。
弁済率も含めて、2~3カ月で再建計画案の提示が成されるはずだ。
親会社として一定の負担をし、第三者への売却だけは回避しようという親会社側の意図。
会員には果たしてどう受け止められるのだろうか。
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