4大メジャーをはじめ、世界のプロトーナメントで、来年中にも薬物テストが開始されることが決まった。というのも世界の主要ゴルフ団体が、ドラッグテストの方向で動き始めたからだ。米LPGAやヨーロッパツアーなどが、独自の基準で、薬物検査を始めつつある中で、R&Aをはじめとした主要なゴルフ団体が、ルール作りやテスト導入に合意したのだ。
「私たちは、ゴルフがクリーンなスポーツであることにまったく疑いを抱いていない。今回の合意は、薬物検査に対する国際的に調整された努力をサポートするものであり、それにより、ゴルフがクリーンであり続けることを証明するものだ」と語ったのは、R&Aのチーフ・エクゼクティブのピーター・ドーソン氏。
もっとも、今回の同意が適用されるのは、とりあえずプロの試合に限ったもの。
R&Aならば、全英オープンが対象となり、「ヨーロッパツアーと同じテストが行われ、(薬物テストに関して全英オープンは)欧州ツアーの1試合と変わらないものになる」(ドーソン氏)という。
今回の同意に署名をしたのは、R&A、USGA、PGAオブ・アメリカ、オーガスタナショナル、米PGAツアー、LPGA、欧州ツアー、署名が予定されているのは、アジアツアー、日本ゴルフツアー、豪州ツアー、サンシャインツアー(南ア)、ツアー・デ・ラス・アメリカス(中南米)の計13団体。
基本的には、世界の大半のプロの試合をカバーすることになるが、今回の同意では、薬物のテストのベーシックとなる内容を決め、オプションとして、一部の薬物や検査方法に関して各団体にフレキシビリティを持たせるというもの。
「世界中で調整されたポリシーを持てたことは喜ばしいことだ。これで、一つのツアーだけが、甘い基準を設けるなどということがなくなる」と欧州ツアーのジョージ・オグレディ・チーフエクゼクティブが語っていたように、これで、薬物検査に関する最低の基準は確保できたということだろう。
プロの試合に薬物検査を導入することは、もう時代の流れで、止めようがない。
しかし、そうした中で、予算や検査施設・人員の関係から、実質基準を甘くして、形だけ整えて検査導入の世論をかわそうというところも出始めていただけに、ゴルフ界の主要な団体が今回の同意にこぎつけた意味は小さくない。
ただ、あえて問題を挙げるとしたら、各団体にフレキシビリティを持たせたことだ。
具体的には、例えば日本のJGAは、すでに薬物テストを導入しており、今年は日本アマと日本女子アマで検査を行っている。このJGAの薬物検査は、世界のアンチドーピング協会の基準を採用したもので、検査対象の薬物の種類も多く非常に厳しいものだ。
これに対して、日本のゴルフツアーが、オプションの範囲内でこれより甘い基準を採用すれば、通常のツアーの試合ではOKでも、日本オープンといったJGAが主催する試合では、将来、失格になるという可能性も出てくる。
オリンピックなどで採用されているアンチドーピング協会の禁止薬物のリストは膨大で、風邪薬や滋養強壮剤などにも、禁止薬物が含まれることもある。
そうした意味では、すべてをテストするには、金も時間もかかることから、潤沢な資金を持つ米ツアーなどでは、問題がないのかもしれないが、他のツアーにとっては、大きな負担となり、世界のゴルフ団体が、同意するには、ある程度のフレキシビリティを持たせる必要があったのだろう。
いずれにしても、今回の同意は、ゴルフ界の薬物検査導入に関して、大きな進展であったことには、間違いがない。
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