プロV1シリーズといえば、タイトリストの看板ボールであり、米ツアーでの使用率1位のトップブランド。そのタイトリストのボールが、日本のブリヂストンスポーツ(以下BS)の特許を侵害していた可能性があったようだ。実はBSと、タイトリストの親会社アクシネットとの間で争われていた裁判で、米国での訴訟に関して、先頃和解が成立したと発表されたのだ。
BSによれば、この件に関した日本での訴訟は、まだ継続中とのことだが、「今回米国におけるアクシネット社(タイトリスト、ピナクル、コブラ等の親会社)との和解が成立し、訴訟が終了したことは大変喜ばしい。この和解は、弊社の技術力と保有する知的財産権の価値の高さを示すもの」と河野久社長が語るように、BS側の特許が認められた形で、和解が成立した。
BSによる2005年3月の当初の訴えによれば、タイトリストのプロV1、プロV1X、NXT、NXTツアー、DT SoLo、そしてピナクルのエクセプションが、BSの持つ10の特許を侵害しているということだった。
今回の和解では、その詳細ついて、両社ともに固く口を閉ざしていることから、具体的な内容は明かされていないが、アクシネット側が、ライセンス料と継続的なロイヤリティを支払うということだから、いくつかのBSの持つ特許の侵害を認めて和解が成立したということだろう。
一説に”ゴルフボールは特許で飛ぶ”といわれるほど、その構造から、素材、ディンプルのパターンまで、ありとあらゆる特許があり、がんじがらめに特許に縛られている。
他社のライセンスを借りることなしに、ボールの新会社を作るのは難しいとまで言われている。
実際、キャロウエイがトップフライト(スポルディング)を買収した際には、会社そのものやブランドよりも、トップフライトが持つ数々のボールに関する特許が欲しかったためとも噂されたほどだし、ボールの特許をめぐっては、キャロウエイもアクシネットといまだ係争しているほどだ。
同様に、新製品を開発する場合も、ライバル社の持つ特許に引っかかることなしに、自社のパテントだけで、新製品を出すのも至難の業とされている。
BSでは、「自社の弁護士だけでなく、特許専門の弁護士を使って綿密に調査してから、海外の市場に送り出している」(島崎平人広報室長)というし、タイトリストの方でも、今回の訴訟では、当初「BSの特許を侵害しているとは信じられない。逆にわが社の特許がBSに侵されているのではないか」(J・ノイマン・アクシネット副社長)などと語っていたことから、タイトリストとしても特許に対してはデリケートになっていたことは事実だ。
もっとも裁判や和解といっても、一般のゴルファーには、あまり関係がないと思うかもしれない。
ただ、他社からのライセンス料が増えれば増えるほど、製品の価格も高くなる。
そうした点で、今回の和解で大きな点は、両社が持つ特許の一部のクロスライセンス合意(ロイヤリティを支払わないで、相互に無料で特許を使用できる合意)が成立したこともあり、これにより、より良い製品がより低価格で販売できることになるはず。
裁判で一番得をしたのは、一般ゴルファーということにもなりそうだ。
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