今年72歳のシニアゴルファーが96年以来11年間で1000ラウンドを達成した。年に平均すると90ラウンド。それはそれで凄い数字だが、その本人があのジャック・ニクラスも入れていた人工股関節の置換手術を受けていたというからさらに驚く。
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ゴルフをやりたい、この一念じるが心を支えた
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偉業を達成したのは、茨城ゴルフ倶楽部の前支配人で現在は顧問を務める瀬戸島四郎さん。
小学生の時に遭遇した交通事故の影響で左ひざが曲がらなくなったものの、根っからのスポーツ好きだった瀬戸島さんは、デパートの店員からゴルフ関連の企業に転職したことをきっかけにゴルフを始めた。
ところが長年のひざへの負担が祟ったのか、変形性股関節症を発症、50歳を過ぎてからは痛みをこらえながらゴルフを続けていたが、還暦を迎える頃には激痛で歩くことさえままならなくなった。
「とにかくゴルフをやりたいという、その一心で人工股関節を入れる手術を受ける決心をしました。主治医の先生の話では、手術後に歩くことはできても、ゴルフをプレーするのは無理だろうということでしたが、私は諦めませんでした」(瀬戸島さん)
股関節は人間の体の中で最も大きな荷重のかかる関節だ。
その働きにより自らの体重を支えたり、体をねじったり、しゃがんだり、振り向いたりすることができるというから、ゴルフはもちろん、日常生活を送る上で欠かせない部位と言える。
そして、股関節が損傷したり、病気になった場合には、瀬戸島さんのように人工股関節のお世話になるわけだが、現在、日本では年間約3万人が人工股関節置換術の手術を受けている。
ちなみに、帝王ジャック・ニクラスも99年に置換手術を行った。
ただし、ニクラスは手術を決意した理由を「ゴルフのためだけではなく、自分らしい生活を取り戻したいと思った。痛みで抱き上げられなくなっていた自分の孫をもう一度、抱き上げたい」と語っており、ゴルフのためだけではなかったらしい。
しかし、その点、瀬戸島さんは違っていた。95年9月に手術を受け、翌96年6月、大好きなゴルフを再開、復活後の初ラウンドで88を記録した。
「人工股関節にしても、特にデメリットはありませんでした。ただ、私のような右打ちのゴルファーは左サイドに壁を作るのがセオリーですが、人工股関節に負担をかけないために力を逃がすスウィングを研究しました。当初は落ちた飛距離も大きなフォローをとることででカバーすることによって、以前とほとんど変わらなくなりました」
昨年10月、900ラウンドを突破した時点で、瀬戸島さんは1年後の今年10月9日を1000ラウンドのゴールと決め、ラウンドを重ねた。
雨天の時は足元が滑りやすくなるのでラウンドを中止することも多いため、目標達成に向けて猛暑の8月には4日続けてラウンドしたこともあるという。
そして、目標通り、今月9日、茨城ゴルフ倶楽部で目標の1000ラウンドを達成した。
「私は障害を持っているわけで、そういう私でも、健康な皆さんと同じようにゴルフができるということを証明したかったのです。無事達成できて本当に嬉しいです」
カートの設置してあるコースでも、あえて歩いてラウンドするという瀬戸島さんは、まだまだ元気一杯。
「これからも体が動く限り、1200、1500ラウンドとゴルフを続けます。そしていつかは、エージシュートをやってみたいですね」
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