97年、アメリカで設立されたジュニア振興活動「ファースト・ティー」が今年で10年。その活動は全米に広がり、一大ムーブメントとなっている。この11月にその10年目の総会が米国で開かれたが、さて日本のジュニアの現況はどうなっているのだろう。
ファースト・ティーとは、ワールドゴルフファンデーションによって創設され、7歳から17歳までの子どもを対象に、人格育成と人生の価値を高めるための学習施設や教育的なプログラムを提供することによって、子どもの人生をよりよいものにすることを目的としたもの。
当初はジョージ・ブッシュ(父)が名誉会長、石油会社のシェルがスポンサーについていることから、ゴルフ振興を図ることで集票しようという共和党の政治的戦略だとの意見もあったが、10年間で150万人もの子どもたちにゴルフを体験させるとともに、いまや収入面でも06年度には年間5940万ドル、約70億円にも達するほどの収益を上げる大きな事業に育ってきている。
一方、日本でも先日、ゴルフ関連10団体から構成されるJGC(日本ジュニアゴルファー育成協議会)新理事長の座に就いたPGA(日本プロゴルフ協会)の松井功会長が、就任発表で、ジュニア育成に3年間で1億円を投資すると発言。
さらに、JGCは昨年12月、ファースト・ティーと提携するなどジュニアゴルファーの育成に関して本腰を入れて取り組むことになった。
「これまでPGAなど色々なところがジュニア育成の教室を開くなど数々の施策を講じてきました。しかし、それはあくまでもプレーヤーとしてのジュニア育成であり、ゴルフを通じて子どもたちの健全な生育を手助けしようという動きは、日本では全くなかった。それがここ数年、社会の流れの中で、子どもに対する考え方が大きく変わってきたのです」(JGC・角田武夫理事)
つい数年前までは公言こそしなくとも、本心では「子どもなんかにゴルフ場に来てもらったら迷惑だ」と考えるゴルフ関係者が少なくなかっただけに、その変わり様には驚くばかりだ。
JGCではジュニアゴルファーの育成に関し、ゴルフスキルを通じて、社会でよりよく生きていくための生きる力を身につける「ライフスキル」を導入した活動を行っていくとしている。
「ライフスキルという言葉は耳慣れないかも知れませんが、ファースト・ティーが掲げる素晴らしい理念なのです。ただし、日本とアメリカではゴルフの環境や風土が違いますから、日本でどんなことができるか、今、いろいろと検討しているところです」(角田理事)
米国など各国では、それぞれの国のプロ団体が社会貢献としてジュニア育成に取り組むべきだという認識がある。
その点、日本のPGAは何もしてこなかった。
松井新理事長が渡米した際、T・フィンチェムPGAコミッショナーに、「どうして、日本ではPGAが先頭を切って、ジュニア育成をやらないのか」と言われ、その言葉に触発されたことは理事長自らも認めている。
松井新体制のもと、JGCがどんな施策を打ち出してくるか大いに注目だ。
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