本誌既報の通り、SRIスポーツのクリーブランドゴルフ買収、マグレガーゴルフの経営陣交替など、ゴルフ界に激震が続いているが、地殻変動はまだ収まっていないようだ。
新たに飛び込んできたニュースは、米国ではマグレガーなどと並ぶ老舗ブランドとして知られ、サンドウェッジの原型や「ダイナパワー」などゴルフ史に残る名器を生み出してきたウイルソンの日本におけるゴルフ事業をキャスコが引き継ぐというものだ。
これまでウイルソンブランドを販売していたアメアスポーツジャパンとキャスコ両社の発表によると、ライセンシー契約が発効するのは2008年1月1日で、それ以降はすべてのゴルフ関連製品がキャスコに移管される。
今回の契約は、クリーブランドゴルフのような企業買収ではないが、今後新たな製品の開発、製造、販売に加え、現在アメアスポーツが保有している市場在庫や販売された商品のアフターサービスまで一切をキャスコが引き継ぐことになる。
ウイルソンといえば、米国はじめ世界34カ国以上で販売されているグローバルブランドだが、今回、日本での事業だけを切り離してキャスコに移管した理由としては、日本のマーケットの特殊性があげられる。
これまでアメアスポーツでは、米国で開発された製品と日本で独自開発した製品を二本立てで展開してきた。
しかし、日本のユーザーの目は厳しく、苦戦を強いられてきたのは事実。そこで、浮かんだのが日本のメーカーとの提携だ。
「日本のゴルファーから100パーセントの満足を得られていなかった。技術力のある日本のメーカーの協力を得て、日本のゴルファーに合う製品を生み出すことが第一の目的」(アメアスポーツジャパン広報部・成瀬秀樹氏)
提携先として数社が候補に上ったが、これまでの実績や知名度も踏まえつつ、決め手となったのは、
「ウイルソン自体、ウェア以外すべて扱う総合メーカーなので、すべての事業を継続してもらうためには、キャスコさんのようにボールまで扱う総合ゴルフメーカーであることが条件でした」(成瀬氏)
一方、キャスコ側にとってまず考えられるメリットは、
「歴史のあるブランドを継承することで、キャスコブランドとは違うユーザー層を広げられること」(キャスコ・高橋芳彦取締役)
キャスコの独自技術とウイルソンのブランド力が合わさった製品が完成すればそれなりの相乗効果が期待できそうだが、当面、プラスアルファの売上げは見込めるし、スタッフや生産設備を効率的に稼働させることができる。
また、キャスコが得意とするグローブやウェアなどの展開も視野に入っている。
さらに、将来的にはキャスコが開発したクラブやボールがアメアスポーツ本社を通じて世界市場で販売される可能性もある。
再編の嵐が吹き荒れるゴルフ用品業界にあって、互いの得意分野を生かした両社の試みに注目が集まっている。
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