陸上のマリオン・ジョーンズ、MLBのバリー・ボンズと、次々に起きたトップアスリートの薬物疑惑で、揺れに揺れるアメリカスポーツ界。ドーピング問題への関心は高まるばかりだが、もちろん、ゴルフ界も例外ではない。
米PGAは来年7月からドーピングテスト実施を発表、違反者に対しては、最初の違反には1年間の出場停止、2度目の違反には5年間の出場停止、3回以上の違反に対してはツアーからの永久追放と50万ドルまでの罰金が含まれるという厳しいペナルティを課すことになった。
では、日本ではどうかというと、JGAでは今年の日本アマ、日本女子アマの2試合ですでにドーピングテストを実施した。
しかし、他の団体ではまだ具体的に実施する決定はなされていないというのが実情だ。。
PGA広報担当者は言う。
「現在、日本ではJGAが中心になって、PGA、LPGA、JGTO、日本学生ゴルフ連盟の5団体でドーピング委員会を作り、アメリカをはじめ世界各国の動向を見守りながら検討を重ねているところです。もちろん、ドーピングはよくないという認識は各団体が共通して持っていますし、世界の流れを見ても、日本でもやらないわけにはいかないでしょう。ただ、まだいつから実施するとは言えない段階です」
一方、JGA広報担当者は、「選手の健康被害に対する配慮はもちろん、薬物を使用することで飛距離が簡単にアップしてしまうことを考えると、それはフェアではありません。さらに、トッププロが禁止薬物を使用することが社会に与える影響は決して小さくありません。だからドーピングは絶対必要なんです」
しかし、実際にゴルフでドーピングを実施するとなると、他の競技にはない特殊性からクリアしなければならない数々の問題が出てくる。
例えば、シニア選手に対する処置もその一つ。
高齢の選手の中には年齢的に心臓や血圧などの持病を持っているプレーヤーも多く、日常的に病気の治療や症状改善の薬を飲んでいる人も珍しくない。
ドーピングテストが実施された場合、そうした選手は100パーセントアウトになる可能性もある。
実はこうした選手をどう扱うかは大きな問題なのだ。
また、シニアでなくとも、喘息の持病を持ち、そのための薬を飲むこともある丸山茂樹のような選手も、今後は自らの常備薬に神経質にならざるを得ない。
「米PGAツアーのほうでまだフォーマットができていないので、自分が飲んでいる薬のリストを提出するのか、薬そのものを出すのか、いまのところ不明です。どう対応するか、いまは情報を待っているところです」(丸山茂樹)
ともあれ、ドーピングテストに引っかかる禁止薬物は範囲が広く、思わぬ薬物がやり玉にあがってしまうこともある。
日本のプロ野球でも、今夏、ソフトバンクのガトームソン投手が禁止薬物の使用で出場停止及び罰金の処罰を受けた。
問題となったのは同投手が使っていた内服用養毛剤だったが、実は、この中に筋肉増強剤の使用を隠蔽する効果のあるフィナステリドという成分が含まれ、これが使用禁止薬物に当たるとされたのだ。
シニア対策も含め、こうしたトラブルが起らぬよう、しっかりとしたガイドラインを作るべきだろう。
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