米LPGAのC・ビベンス・コミッショナーは、苦境を完全に乗り切ったようだ。先ごろ、米LPGAは、2008年のスケジュールを発表したが、賞金総額は5820万ドル(約64億円)、まだ決まっていない試合が3試合あるが、それを含めれば、公式戦34試合、後援競技2試合という充実した内容だった。なにより、1試合の賞金総額が200万ドルを超える試合が13もあり、平均の賞金総額が177万ドルというから、わずか3年ほどで、賞金が50%近くもアップしたことになる。
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メキシコ人、オチョアの活躍もLPGAの追い風になった
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これまで無理強いとも言えるような強権ぶりを発揮し、一時は、幹部職員が軒並み退職したり、試合のスポンサーたちが、声を合わせて、コミッショナー批判を繰り返したりと、苦境に立ったビベンス・コミッショナーだが、逆に、その豪腕ぶりが、LPGAの海外などでの人気の追い風に乗って、効を奏したといえるのかもしれない。
何しろ、今年のLPGAの賞金女王は、メキシコ出身のL・オチョアで、2位がノルウェーのS・ペターセン、3位がアメリカのP・クリーマーというもの。
これまでLPGAを席巻していたA・ソレンスタム(スウェーデン)やK・ウェブ(オーストラリア)から、完全に世代交代をし、若返った印象を与えたシーズンで、その上、これまでとは異なった国の海外勢の進出で、新たなマーケットがLPGAに開けたからだ。
そのためもあり、08年のシーズンは、米女子ツアーの海外進出がこれまで以上に進み、南アフリカのワールドカップから始まって、シンガポール、新しいロレーナ・オチョア・インビテーショナルを含めてメキシコで2試合、フランス、イギリス、カナダ、韓国、日本、それに海外ではないがハワイでの試合が1試合増えて3試合となり、全試合の3分の1がアメリカ本土以外で開催されるという、なにやら世界ツアーの様相を呈し始めている。
1試合の賞金額が100万ドルを下回る試合がなくなった分、古くから細々と続けられていたトーナメントにとって代わり、海外のスポンサーや海外の試合が増えてきているということだろう。
「金額については、具体的な数字を出すことはできないが、海外からのテレビの放映権料は、正当な金額をもらっている。今のアメリカ国内での状況は、不幸にも正当な放映権料とは言いがたいもので、その分、放映権料の収入全体では、海外からのものが、大きな割合を占めているということになる」とは、ビベンス・コミッショナーの言葉。
この言葉が、昨今のLPGAの状況をしめし、08年のスケジュールに現れているようだ。
もっとも、アメリカ人以外のプレーヤーが活躍しているといっても、オチョアのようにアメリカの大学を卒業したり、実質アメリカで育ったプレーヤーも少なくない。
それだけに、海外での試合が増えるということは、誰もがよく知らないコースでプレーするということでもあり、皆が対等な条件でプレーするということになる。
つまりは、日本人プレーヤーにとっては、アメリカ人のホームアドバンテージという不利な条件がなくなるということでもある。そういう意味では、ドライバーの不振が直れば、宮里藍の念願の初優勝、08年に米ツアーに挑戦する上田桃子の活躍も夢ではないかもしれない。
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