今年11月に開かれた日本ゴルフ学会第20回大会(熊本)で、「クラブシャフトの(シャフト先端)チップ径の差異によるスイングへの影響」という興味深い研究成果が報告された。
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2008年モデル、ザ・ゼクシオも9ミリチップ
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発表を行ったのは、青森県八戸高専の福田廣夫名誉教授、蝦名謙一准教授らのグループで、ウッド用シャフトの先端部の太さがヘッドスピードにどう影響するかを研究した実験データが公開された。
実験に使われたのは、『スピーダー569』のSシャフトとアキラの390CCヘッドの組み合わせのドライバーで、8.5ミリチップと9ミリの両方を40代から60代、ハンディキャップ1から15までの24名が打ち比べた。
結果は、8.5ミリチップのヘッドスピードの平均値が42.56m/sだったのに対し、9ミリチップは42.86m/sと0.3m/s上回った。
また、ヘッドスピード別、ハンディキャップ別にグループ分けした場合でもすべてのグループで9ミリチップのヘッドスピードが上回り、とくにハンディキャップ10以上のグループでは、8.5ミリチップ=40.74m/s、9ミリチップ=41.89m/sともっとも大きな違いが見られた。
ちなみに、現在市販されているシャフトを見渡すと、ウッド用カーボンシャフトのうちOEM(メーカー純正)シャフトは、従来8.5ミリチップが標準だったが、ヘッドの大型化・長尺化とともに9ミリチップが主流となりつつあり、また海外ブランドはほとんどが9ミリチップを採用している。
すべてのドライバーに9ミリチップを採用しているSRIスポーツは、その理由として「大型ヘッドに合わせてブレを抑えてくれること」「品質上の強度を高めるため」の2点を挙げる。
また、ブリヂストンスポーツのように「アマチュアをターゲットにする『V-iQ』シリーズはブレにくい9ミリチップ、アスリート系向けの『Xードライブ』には走り感を重視して8.5ミリチップ」(ブリヂストンスポーツ広報室長・嶋崎平人氏)と対象ゴルファーに合わせて使い分けをしているメーカーもある。
一方、アフターマーケット用のシャフトはほとんどが8.5ミリチップを採用している。
「細いほうがしなりを利用して飛ばす力が大きくなる」(フジクラシャフト)のと、OEM品と違ってコストを十分にかけられるので8.5ミリでも強度を高められるからだ。
一般ゴルファーの間では、加速感を求めるなら8.5ミリチップ、安定感重視なら9ミリチップというイメージが定着しているが、これは福田名誉教授らの実験結果とは一見矛盾しているように思える。
その理由は振りやすさと関係がありそうだ。
実験と同時に行われたアンケート調査では、8.5ミリチップの方が「しなり戻り」があると答えたのは24名中14名で、定説を裏付けている。
反対に9ミリチップが「やさしい」「マッチングしている」という回答は24名中18名に達している。
『ゼクシオ』はじめ、売れているドライバーがおしなべて9ミリチップを採用しているのもうなずける。
また、打点がブレやすいアベレージゴルファーは、選択肢は少ないものの9ミリチップにリシャフトしてみるのも一つの手かもしれない。
「数値に表しにくいのがシャフト。今後もクラブ選びに役立つような研究テーマを見つけていきたい」(福田名誉教授)という同グループに期待したい。
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