2008年からのクラブに関する規制がR&Aからアナウンスされたとき、スプリング効果、体積、長さについては、すでにその数値を超えるクラブが出回っていたためメーカーから反対の声が上がった。しかし、ヘッドの慣性モーメントについてはさほど問題とされなかった。それは、当時の形状と素材では上限値の5900gcm2を達成するのは難しいと考えられていたからだ。その慣性モーメントを大きくしようとした結果が異形クラブだった。
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五角形のミズノ(JPX A25)も加わって異形ウォーズ勃発
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ドライバーの飛びを追求するには、いかに球を曲げないか、すなわち慣性モーメントを大きくすることが有効な方法であることは間違いない。
そこで登場したのがナイキ『サスクワッチ・スモースクエア』やキャロウェイ『FT-i』だった。
慣性モーメントを最大化するには、フェースの重心からもっとも遠い位置にウェートを配分すればいい。
縦横の長さが決められた中で、それを達成するには四角形がベスト。
奇抜な形のドライバーが両社から同時に登場したのは偶然ではない。
また、2007年はタイトリスト『D1』テーラーメイド『バーナー』などヘッド後方の頂点をさらに後ろにストレッチした三角形のドライバーも登場した。
重量をフェースから遠い位置に置くという考え方は四角と同じだが、三角は操作性もある程度意識し、違和感を少なくしたところに特徴がある。
かくして2007年ドライバー市場は、丸(洋梨)、三角、四角が入り乱れての混戦となったが、セールス面では『ゼクシオ』や『インプレスX』など、「オーソドックスなクラブに軍配が上がった』(コトブキゴルフ北口店・稲垣憲店長)。
しかし、業界の一部からは「3カ月ももたない」と揶揄された異形クラブも、ユーザーの目が慣れるにつれてじわじわと売れ始め、2008年モデルでは異形とはいえないまでも三角や四角に近い形状のクラブも目立ってきた。
四角の元祖ナイキは2代目の『スモースクエア』を2月に発売する。
この2代目は、ついにルール上限の5900gcm2を実現。
不評だった音もフルチタン化で改善、何より深堀圭一郎がロングドライブを記録して見せ、「四角は曲がらないけど飛ばない」という不評も払拭し、四角の地位を押し上げそうだ。
そんな中、「丸」「三角」「四角」のいいとこ取り? で登場したのが、ミズノの五角形ドライバー『JPX A25』だ。
「MOIを追求すれば四角になるが、5900gcm2がベストとは考えていない。ヘッドがちゃんと返ってくる大きさを狙ったのが『A25』。また、円運動であるスウィングプレーンに沿ってクラブを引きやすい形を追求し、パーシモンの形をベースに不要な面だけを削り落とした結果が五角形」(ミズノ広報宣伝課・西田維作氏)と実用的な振りやすさを強調している。
そして、異形ヘッドはドライバー以外にも広がりそうだ。
『JPX A25』、『サスクワッチ・スモースクエア』はフェアウェイウッド、ユーティリティ、ハイブリッドアイアンまでシリーズ化され、キャロウェイも10月のPGAショーで『FT-i 』のフェアウェイウッドをお披露目している。
「きちんとした距離の打ち分けと方向性が求められるFWやユーティリティには異形ヘッドが向いてます」(前出・稲垣氏)
ヘッドが小さい分、形状的な違和感も少ないことからドライバーよりも先に大きなブームになる可能性もある。
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