この春、日本女子プロゴルフ協会(LPGA)が初めて海外で開催するツアー競技「JLPGA豪州選手権」(3月28日~30日)について、その開催を危ぶむ声が聞こえてきた。LPGAの念願といわれる海外進出だが、どうしてこのような声が上がっているのだろう。
この大会は、開催コースのレイクランドGC(ゴールドコースト)を所有するニューレイクランズという日系企業の主催。
しかし、もともとは同社がメインスポンサーだったわけではなく、いわゆる冠スポンサーが他におり、某カード会社の名前が挙がっていた。
それがどうした理由か、土壇場で破談。そのため、昨年末のツアー日程発表では、LPGA側は当日まで日程に加えるべきか迷っていたという。
それでも発表に踏み切ったのは、昨年もハワイで開催を企画していたツアー競技が、正式決定を目前に米LPGAとの調整がつかず、やむなくご破算となった前科があったからだろう。
2年続けての消滅は大きな失態だ。そしてそれ以上に、日本ツアーの存在を世界にアピールするには、ツアー隆盛の今こそ、海外にうって出る時との判断があるからだ。
ところが、大会の2カ月前になっても、開催に欠かせないはずの冠スポンサーの発表がない。
この件をLPGA事務局に問い合わせると、冠スポンサーの有無も含め、「現段階で発表できることは何もありません」との返事。
しかし、トーナメント部門エグゼクティブディレクターの高須晧友氏はツアー日程の発表直後に、「より充実した大会にするために、今後もスポンサー営業に努めていきます」と語っている。
さらに現地代理店の営業関係者から、同大会のスポンサー営業の難航ぶりが伝わってきた。
それによれば「LPGAは賞金・運営費を含め、総額4億円の費用を見込んでいるようです。うち2億円を支払ってメインスポンサーになりたいという日本企業があるそうですが、その業種が問題なのか、LPGAの承認がなかなか得られないそうです」というのが現状のようだ。
承認が得られない理由は不明だが、かつての近未来通信(06年にツアー競技を主催)のような”危ない”企業でない限り、そして他に名乗りを上げる企業が現れない限り、背に腹はかえられない。
で、間もなくこの冠スポンサーは承認されるはず。
「ところが、それでも4億円にはまだ数千万円ほどショートするとのことで、地元州政府関係者をはじめ、地元企業に話を持ちかけているのですが……」と先の現地代理店関係者。
スポンサー営業が難航する理由は、ひとつはメインスポンサーが未定のため。
そして、別の豪州LPGAの営業代理人が語るところによれば、「大会の日程が悪すぎます。2月に同じゴールドコーストで欧州ツアーとの共催競技・ANZレディスマスターズが開かれ、その直後なので地元企業にはちょっと……」と現地の難しい事情を明かす。
ところで、この4億円という経費だが、国内の通常の大会よりも巨額だ。
そこには選手に対し、いわゆる“アゴ足”の遠征費用を面倒みようという思惑があるのかも。そうすることで、多くの有力選手の出場をうながしたいのでは……。
同大会をはさんだ前後週、国内でより賞金額の大きなトーナメントが開催される。
それゆえ現状では、シード選手に多くの欠場が出るのでは、と噂されている。
ただし、このJLPGA豪州選手権の実施自体は、地元では「豪州LPGAにとっても、州政府にとってもメリットがあり、ぜひ開催してもらいたい」と歓迎している。
そうした期待に応え、国内ツアーの国際的プレゼンス(存在感)を高めるためにも、今年は何とか開催にこぎつけ、実績を挙げてもらいたい。
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