石川遼がプロ2戦目のパールオープンで初賞金を獲得した。優勝した矢野東をはじめ星野英正、室田淳ら、そうそうたる面々が上位を賑わした。新聞、TVで報道されなかったパールオープンの石川遼騒動を追った。
大会そのものはハワイのローカルトーナメント。単独10位に入った石川遼の賞金も約26万円と決して高額ではない。
それでも本人は「そんなにもらえるんですか?」と目を丸くし、「26万円なんていう大金、ちょっとこわいです。だって僕まだ高校1年生ですよ! 高校生がもらう額じゃないです。僕なんて1万円で十分」と謙虚そのもの。
5億とも10億ともいわれる契約を交わし、16歳にして億万長者になったはずの石川遼だが、26万円ごときに“ビビる”とは意外!?
しかしそんな謙虚な言動が皆に愛される理由なのだろう。
ところでパールオープンは昨年、中学3年にして13位タイに入り「自信をつけた」思い出の大会。
「昨年以上の成績」を目指して挑んだ今年、彼を見つめる周囲の人々の目は大きく変わった。
「石川くんだけには負けたくない、とプロなら誰もが思っているはず」と勝った矢野が激白したほど、皆が彼をマークする。
「遼くん来る!」のニュースは地元の日系人の間にも広がり、舞台となったパールカントリーには「遼くんはいつ来るのですか?」という問い合わせが殺到した。
対応に大わらわなコースはプレスルームを新設。日本から詰めかけるであろう、大勢の報道陣の襲来に備えた。
混乱を防ぐため、彼の組だけには、普段は警官をしているというボランディアのいかつい男性が3人ついて警備を担当。
ギャラリーの中には観光客の“おばさま親衛隊”や、「どうしてもバレンタインのチョコを渡したい」という少女も現れ、石川遼は照れながらも丁寧にサインに応じていた。
そんな混乱の中でも王子は実に爽やかだった。
初日、グリーンに手こずりイーブンパー72で出遅れると、父・勝美さんに「もっとプロらしいプレーをしろ!」と叱責された。
と、昼食の箸を途中で止め、すっくと立ち上がり、練習場に直行した。
その夜、「よし、明日が勝負」と思い立った石川遼は、普段は最終日に着る、“赤の勝負服”を2日目に着て気合いを入れ直す。
するとノーボギーの67をマークし、一気に優勝圏内に浮上したのだ。
最終日は「攻めて攻めて、攻めまくる」持ち前の積極ゴルフでピンを狙い、幾多のトラブルを招いたが勝負強さを発揮しナイスセーブを連発。
1つスコアを伸ばし、単独10位でフィニッシュした。
ラフからラフを渡り歩き絶対絶命のピンチに立たされた15番パー4では、10メートルものボギーパットを捩じ込みギャラリーは大喜び。
「でもあれ、ボギーだったんですけど(苦笑)」と内心舌を出しながら、「うれしかったです。(10メートルものパットを入れたことは)自信になりました」とハニカんだ。
そして攻めのゴルフでギャラリーを魅了したことに、本人は「大満足!」と手応えを口にする。
距離の短いパー4ではワンオンを狙って、前の組がホールアウトするまで待つ大物ぶり。
その落ち着き払った態度からは、プロになった気負いや緊張は微塵も感じられず、むしろ「自分のゴルフを見てもらうのがうれしくて仕方ない」といった“ワクワク感”が伝わってきた。
大人たちの心配をよそに、石川遼は着実に成長している。
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