レイクウッドGCで貴重品ボックスのスキミング事件が発覚してから2年半が経過した昨年秋、貴重品ボックスの大手メーカーが、静脈認証型の貴重品ボックスを売り出した。のど元を過ぎて、熱さを忘れつつあるなか、このシステムの導入が静かに進んでいる。
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いち早く指紋認証型を取り入れた笠間東洋GC。悪人対策はバッチリ
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この事件発覚後、ゴルフ場側が貴重品ボックスの位置を人目に付きやすい場所に移したり、テンキーの周辺に小型カメラが仕掛けられていないかどうか定期的にチェックしたりといった、アナログな手段で防止策を講じたため、それだけで、効果はそこそこ上がっている。
とはいえ、よりセキュリティの高いものが安くできるのであればそれに越したことはない。 昨年秋の発売とほぼ同時に静脈認証型の貴重品ボックスを導入した市原京急CC(千葉県)は、クラブハウスの増改築のタイミングで入れ替えを決めた。
「貴重品ボックスはリースにしているが、静脈認証タイプのものでもリース料がほとんど変わらない」という。
市原京急が入れた貴重品ボックスは、アルファロッカーシステム社製で、中指の静脈認証タイプのもの。
親会社のアルファは錠前の老舗で大正12年創業。主力商品は自動車のキーで、日産自動車がお得意様という東証一部上場企業。駅のコインロッカーを世に送り出した会社でもある。ゴルフ場に於けるロッカーでのシェアは8割近い。
レイクウッドの事件後、「究極の安全性を追求するには生体認証しかないと考え、顔や指紋、静脈でも指がいいのか掌がいいのか、といった研究を重ね、何度も試作品を造っては実験を繰り返した」(アルファロッカーシステム)という。
結果、三井住友銀行やみずほ銀行のキャッシュカードに使われている、日立オムロンターミナルソリューションズの中指静脈認証型の認証技術を搭載した新製品を完成させた。
中指を所定の場所に音声案内に従ってかざすと、自動的に開閉するので、暗証番号も要らないし、ロッカーの番号を覚えておく必要もない。暗証番号タイプでロッカーが46個付いているものは1台180万円だが、中指静脈認証型は220万円。
従来品よりも若干高いが、レシートを無くしてロッカーの番号そのものや解錠に必要な個別番号がわからなくなり、フロントに駆け込む心配もない。
「静脈認証は血流で判断するので、極端な話、切り落とした指では開けることが出来ない」(同社)という。いったん買うと決めたら1コースあたり2~3台買うのが普通。発売から半年で20数コース、約50台ほどの受注を抱えている。
一方、3年前にいち早く指紋認証型の貴重品ボックスを入れた笠間東洋GC(茨城県)は、東洋フローラという会社に特注で作ってもらったため、「改良に改良を重ね、完成までに半年以上かかった。費用もバカにならない額がかかっている」という。
市原京急でも笠間東洋でも、導入当初は暗証番号タイプに慣れているので、指のかざし方が悪くて反応しないこともあったようだが、すぐに馴れて会員には好評だという。
最近ではスキミング被害も沈静化。ロッカーはいったん買ったら10年以上使うケースが大半とかで、一挙に導入が進むわけではないだろうが、「暗証番号タイプのものが世に出た時よりは、早いペースで普及が進みつつあるような手応えがある」(アルファロッカーシステム)という。
会員がコース側に導入を要請すれば普及も早まるかも?
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