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週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。
内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。

週刊ゴルフダイジェスト 3/11号
2008/2/28更新
ゴルフの語り部
杉山通敬さんの死を悼む

 ひとまわり若い僕より、もっともっと若い人たちからも「スギさん」と呼ばれ親しまれていた72歳のゴルフ作家が、先週亡くなった。

『月刊ゴルフダイジェスト』の編集長を経て42歳で独立してのち、名人たちの肉声を「聞き書き」という手法で伝えつづけた杉山通敬さん。中村寅吉さんや中部銀次郎さんに、いちばん信頼されていた人である。

 東京は日本橋の生まれ、気さくで明るく、柔らかな心をもっていて、ゴルフよりもむしろ酒という、同じたぐいの僕からみても、じつに飲み方のきれいな人でもあった。

 あの世代の江戸っ子は、田舎モノの僕なんかとは人間の下ごしらえからして違うものなのかと恨めしくもあった。

 スギさんが「聞き書き」にこだわったのはだぶん、ゴルフの天才たちの言葉がとても感覚的で、そのまま伝えたのでは誰にもわかってもらえないから、もっとすり寄って、相手の息づかいまで聞きとってやろうという決意があったからだろう。

 聞くチカラとは、ハンパなものではないと思う。聞き上手になるためには、“人”上手でなければならないからだ。

 10年以上も前になるが、『週刊新潮』の「ギャラリー寅吉」の編集者だった岩佐陽一郎さんとスギさんと僕とでよく飲み歩いたことがあった。

「寅さんたちを見倣え」なんて話のノリで、プロから大いに顰蹙を買った小誌連載「プロゴルファー改造計画」が生まれたりもした。

 申し合わせたように旅立ってしまった。不思議なことである。

 誰にもいつかはやってくるその時、人はどんな思いいにかられるものだろう。

 あきらめか、あきらめきれずにうろたえるか、僕はたぶんどちらかだが、スギさんにはこんな洒脱な辞世のうたが似合っている。

 昨日まで人のことかと思いしが  おれが死ぬのかこれはたまらん (蜀山人)

合掌。中村信隆(編集主幹)

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