今から20年ほど前までは、ゴルフボールのトップブランドとしてタイトリストと共に市場を席巻していたマックスフライ(ダンロップ)とトップフライト(スポルディング)が、身売りされた後、現在はメーカーのサブブランドとして扱われたことで、高級品ブランドとしての過去の栄光を失っている。
2月半ば、マックスフライブランドのオーナー、テーラーメイド・アディダス社が、マックスフライブランド商標の一切を、米国大手スポーツ用品小売チェーン、ディックズスポーティンググッズ社に売却すると発表した。
テーラーメイド社は2002年、経営破綻したマックスフライ事業のボール製造技術、関連特許、商標の全てを買収し、ゴルフボール事業の強化と同ブランドの立て直しを図ってきたが、中級ボール、「マックスフライヌードル」のヒット以来、意図に反して定着した廉価ボールイメージの立て直しに苦慮していた。
一方、ボール製造技術強化によって開発したテーラーメイドブランドが高級ボールブランドとして確立し、06年に発売したツアープリファードブランド、「TPレッド」、「TPブラック」が市場シェアを獲得し始めると同時に、マックスフライの”高級ブランド”としての立場は急速に失われていったようだ。
さらに今年、メタルウッドで知られているバーナーブランドの中級ボールが発売されて以来は、既に中級ボール、「パワーマックス」1機種に絞られていたマックスフライブランドは、同社にとって不要なものとなり、結局は売却決定に至ったということのようだ。
同様のケースで、トップフライトを買収したキャロウェイゴルフでも、高級ボールはキャロウェイブランドのツアーシリーズを発売し、旗艦ブランドの高級イメージを高める一方で、トップフライトブランドは、共喰いを避けるためか、中級以下のボール戦略に当てるなど、ブランドマーケティングに配慮してきている。
ただ、トップフライトの場合、昨年発売した高性能中級ボール、「D2」の成功で、最近、米国市場で急速に増えてきた廉価ボール市場のシェアを拡大したため、今年は更に「ゲーマー」、「フリーク」と立て続けにトップフライトブランドでの廉価ボールを新発売し、高級品のキャロウェイブランドと両面作戦によりボール市場を攻略する作戦のようだ。
テーラーメイド、キャロウェイ2社による買収獲得ブランド戦略は売却と維持活用に分かれたが、双方とも、かつての有力ブランドの事業ノウハウや特許を自社ブランドゴルフボール事業確立に活かした結果、過去の高級品ブランド、マックスフライ、トップフライトを今や中級以下のブランドに格下げしてしまった感は否めないようだ。
日本、韓国、台湾地域に於けるマックスフライブランドを現在も保有し、かつては日本国内で糸巻きボール、「ロイヤルマックスフライ」により、高級ボール市場を抑えていたSRIスポーツ社も、「世界的にブランドイメージが低下したマックスフライブランドの使用を控え、スリクソン、ゼクシオ、エブリオなど自前のブランド拡大に注力したい」(山田照郷同社広報グループ課長)と話している。
一時は、高級ゴルフボールの代名詞でもあったマックスフライ、トップフライトブランドの凋落、オールドファンには一抹の寂しさも感じさせることだろう。
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