日本ゴルフツアー機構(JGTO)は3月3日の総会で役員人事の承認を行った。JGTOが誕生して10年目の今年、ツアーは長引く低迷からようやく光明が見え始めた一方、政府による公益法人改革の荒波にさらされようとしている。この難局に新しく舵取りをすることになった小泉直会長は、トヨタ自動車出身の元ビジネスマン。この思い切った外部からの招聘にはどんな狙いがあるのだろう。
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小泉新体制旗揚げ。島田幸作(写真左)は名誉会長に
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99年のJGTO設立以来、初代チェアマン(05年の社団法人認可後は会長職)を務めてきた島田幸作プロだが、かねてより体調不安を理由に再任を拒否。
そのうえで、男子ツアーが今置かれている状況にあって、プロゴルファーがトップに立つことには限界があるとして、後任には「ビジネスがわかる人にバトンタッチしたい」との意向を持っていた。
そこで、06年からJGTO理事を務めるトヨタ相談役の奥田碩氏らに相談したところ、新会長の白羽の矢が立ったのが元トヨタ部長で、その後同社系列会社の取締役などを歴任した小泉直氏(68歳)だった。
小泉氏は、立教大学時代にはゴルフ部に所属するなど、ゴルフ競技に精通する人物。トヨタでも、ベンチャービジネスとなる子会社(トヨタオートモールクリエイト)を立ち上げた後、04年には系列のベルフラワーCC(岐阜県)の再生に代表取締役として手腕を振るっている。
また、同職を2年前に退任してからは日本学生ゴルフ連盟常任理事など、アマチュアゴルフ界にかかわってきた。
しかし、JGTOにおけるトヨタは、前出・奥田氏の理事就任、今季新設のレクサス選手権など、このところ存在感を増すばかり。そのため就任会見の席でも、「トヨタ出身ゆえの会長就任では?」との質問があった。
それに対して、小泉会長は毅然とした表情で、「トヨタを離れてだいぶ断ちますし、前職は学生ゴルフ界でしたから、元トヨタというより50年来のアマチュアゴルファーとして考えていただきたい」と答えた。
JGTO事務局や選手会からは、男子ツアーは様々な難局を迎えるにあたり、小泉会長のビジネスマンとしての手腕を高く買っての就任要請との説明が返ってきた。
実際、小泉氏を学生時代から知る学生ゴルフ界の某関係者は、「学生ゴルフ界にとっては痛手ですが、今のツアー機構には堅実経営とかカイゼンといったトヨタイズムは活用できるでしょうから、とってもいい人選だと思います」と評価する。
また、以前のトヨタはゴルフ界と疎遠だったが、最近は三好CCなど名門クラブの理事就任など、アマチュアゴルフ界に広い人脈ができつつあるという。
「そうした人脈はスポンサー獲得だけでなく、ビジネスの側面で大いに役立つはず」(前出・関係者)と期待する。
その小泉会長だが、就任挨拶の第一声は「ゴルフの原点はエチケット&マナー。これなくしてゴルフはないので、選手の意識革命を進めたい」と、厳しい表情で言及していた。
また、懸案の日本プロゴルフ協会との関係だが、私見と断りながらも「将来的には、ひとつの組織にするのが望ましいように思う」と発言したことが注目される。
今後、小泉会長のもと、男子ツアーは大きな変革があるのかも。
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