かつてトム・ワトソンらが提起した「ピンアイ2」の角溝の問題は、その後カーステン社とUSGAなどとの法廷闘争にまで発展した。そして、いままたアイアンのスピンを制限するための新たな規則が提案されている。
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溝の縁が鋭いとスピンがかかりやすいといわれるが……
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昨年2月、R&Aは「クラブフェースの溝のマーキングへの規則変更案」を発表すると同時に、クラブ製造メーカーに対しては、溝の形状がラフから打った場合のスピンを著しく増加させるという研究から導き出された結論を示した上で、同年8月1日までに意見を求める文書を送付した。
「新規則案」は、現行規則で決められている溝の長さ、幅、深さ、溝同士の間隔に加えて、(1)溝の容積率、(2)溝の縁の鋭さ、の2つの規定を追加するもので、R&AはこれによってラフからのスピンはかつてのV字溝と同等になるとしている。
このうち(2)溝の縁の鋭さについては、現行規則でも鋭利でないこととして丸みの半径が0.020インチ以上の円形でなければならないと定められているが、実際には測定方法に関する厳密な規定はなく、エッジに当てた人間の爪に傷がつくかどうかというあいまいな判定基準が用いられている。
「新規則案」では、これを厳格に適用するため、最小半径を0.010インチとした上で、新たな測定方法が定められることになるだろう。
この「新規則案」は、2009年1月1日から実施される可能性がある。しかし、現在出回っている多くのクラブがこの規則に適合しなくなることから、2010年1月1日までに製造されたクラブについては、少なくとも10年以上はルール適用外とする提案も同時になされているため、移行時の混乱は高反発クラブのときほどではなさそうだ。
R&Aでは、今回、できるだけ情報公開を行い、猶予期間を長く設けるなど慎重な手続きを行うことで、大きな反発を招いたSLEルール問題の轍を踏みたくない考えで、2005年にスピンの研究を行っていることを発表して以来、メーカーに研究成果をたびたび公開してきた。
また、今年2月22日、ジャパンゴルフフェアにR&Aから研究・テストディレクターのスティーブ・オットー氏らが来日して、現在検討されている測定方法に関しての説明を行った。だが、あまりにも厳密な測定方法に対して疑問の声も。
「いまのアイアン生産の公差では適合しない可能性が高くなります。ほとんどのアイアンが作られているスタンピング成型では、センターと両端とで丸みが変わってしまうので、マージンを大きくとらないと対応できません。ルールぎりぎりで作ろうとすれば、CNCマシンで1個1個削るしかなく、コストが価格にはね返ってしまいます」(クラブ設計家・高橋治氏)
高橋氏は新規則そのものにも首を傾げる。
「R&AやUSGAが歯止めをかけたいトッププロは、スピンをかけるのに溝に頼っていません。アマチュアいじめと受け止められてもしょうがない。」
実際に新規則が導入されるかどうかは、まだしばらく時間がかかりそうだが、この問題どう決着がつくか気になるところだ。
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