ゴルフ場買収に積極的な国内勢の一角・ゼクスが、2月28日、突然系列5コースの経営会社の株式を売却し、ゴルフ場事業から撤退することを表明した。日本初のシニア住宅優待申し込み権付きのゴルフ会員権『Cステージメンバーシップ』発行に伴い、華々しい記者発表を開いてからわずか1年半。運営への評価も高かったゼクスに何があったのか。
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ゴルフ場の営業収益はよかったというが……(写真は那須グリーンコースC)
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ゼクスは今から5年前、大和都市管財系の那須グリーンCCを、民事再生手続きを通して取得、ゴルフ場事業に参入した。
その翌年の平成16年には昭和総合開発系の関越GCと藤岡GC、グリーンレイク系のワイルドダックCCを取得。そして平成17年には、PGMで決まりかけていた大洋緑化系の都GCのスポンサーに、会員組織のたっての希望で就任し、計5コース体制に。
買収後はコース名も『チャーミングリゾート』で統一、コース改造も積極的に実施し、運営の面でも高い評価を得ていた。
ゼクスの本業は不動産コンサルと老人ホームや医療施設の運営などのシニア向けサービスなので、将来ゼクスが作るシニア向け施設への入居費の一部に、系列5コース利用可能なゴルフ会員権を充当出来る、というのが、平成18年9月に発売された、シニア住宅優待申し込み権付きゴルフ会員権Cステージだった。
コース売却とともにCステージのサービスも終了を余儀なくされ、会員権の購入者にはかかった費用も含めて全額を返還する。
新規募集中だったワイルドダックについても、そのまま会員として残りたい人は残り、退会を希望する人にはかかった費用も含めて全額返還する。
5コースのうち都GC以外の4コースの売却先はアコーディア・ゴルフ。「国内勢で捜したようだが、短期間にまとまった資金を出せるところがなかったと聞いている」(チャーミングリゾート関係者)。
2月29日付で売却が済んでいる藤岡、関越、ワイルドダックの3コースについては、3月1日からアコーディアに運営が移っており、那須は4月から移る。
問題は都GC。「会員が撤退を知らされたのは、撤退発表後の3月1日。売却先は東京建物でゼクス側は調整を図っているようだが、会員からは隣接する都留CCで実績を持つシャトレーゼを希望する声が出ている。事前にゼクスからは何の説明もなかったので、手続の手順に不満を持つ会員もいる。いずれにしても会社更生手続の際に締結したゼクスとの協定に、転売の際には理事会の承認を必要とする条項があるので、会員総会で会員の意志を統一し、理事会に諮られることになると思う」(都GCの会員)という。
ゼクスの代表・平山啓行氏は伊藤忠商事出身の50歳。新興企業の経営者の中では、“大人の会社の経営者”からの評価が高い、希有な人物として知られる。
「平山氏は大のゴルフ好きで、チャーミングリゾートの責任者である坂本氏も含め、本当に会員のことを考えて一生懸命だった」(チャーミングリゾート那須グリーンコースC総支配人を務める青山薫プロ)
ゼクスは「経営資源を本業に集中投下するための撤退」であると説明している。ここ数年積極的な投資を展開、同時に有利子負債も1000億円を超えたゼクスが、不動産市況の冷え込みで一つの踊り場を迎えたということなのだろうか。
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