3月31日、ゴールドマン・サックスグループ(以下、GS)が筆頭債権者の茨木国際GC(大阪府)のスポンサーに、PGGIHが正式に決定した。3月25日締め切りの書面投票を受けての正式決定だが、昨年7月にPGGIHに内定していたことは本誌既報の通り。GSとPGGIHが茨木国際をめぐって一騎打ちした一部始終を語る。
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PGグループの旗艦コースになれるか、茨木国際GC
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弁済率は預託金もそれ以外の債務も、1億円までが17.2パーセントで1億円超が3.9パーセント。預託金以外の債務と、退会会員の預託金は7月31日までに一括弁済。継続会員は新たに預託金として預託し10年据え置き。まずまずの好条件と言える。
GSとPGGIHの親会社であるローンスターの一騎打ちとしては、かつてのSTT開発と日本ゴルフ振興が名高い。
もともと茨木国際の会社更生手続は、昨年2月にGSのグループ会社がコース施設の一番抵当権を持つ筆頭債権者として申し立てたもの。アドバンテージがあったはずのGSはなぜ早々に諦めたのか。
GS側は当然「ノーコメント」だが、「謎解きのカギは更生担保権評価額にあるのでは」(ゴルフ場の専門家)との声も。茨木国際は昭和35年のオープンで、預託金総額は88億円(更生手続申立時点)。
この時期のオープンで27Hのコースとしてはまずまず標準的で、深刻な預託金問題を抱えていたわけでもないし、会社更生手続も自ら申し立てたものではない。
実は申立原因となったGSからの借金は、元を正せば30年以上前のもの。茨木国際のオーナー家である加藤一族が、高度経済成長真っ只中の昭和47年に、新たに4コースのゴルフ場開発を計画したが、その直後に起きたのがオイルショック。
思うように会員権が売れず、一部仮オープンにこぎ着けたコースもあったが、巨額の債務だけが残った。コース敷地を売却するなどして借金を多少は減らせたものの、抜本策とはならなかった。
が、昭和61年、関西のゼネコン・鴻池組が、新たに別のコースを新設することで解決を図る方策を提案。その際に123億円の資金を融資したのが、かのオリックスだった。ところが、この計画も許認可がとれず頓挫し傷口を広げる。
当時のオリックスはゴルフ場経営への進出など考えていなかったらしく、オリックスの債権は別の企業に1番抵当権ごと譲渡されてしまう。
トーナメント開催コースとしての華々しい顔の裏で、台所は火の車だったのだ。
GSが取得した一番抵当権付き債権は、まさにこのオリックスが付けた抵当権。一番抵当権者であるGSの債権額は67億円。本来であればGSは絶対的優位に立っていたはずなのだ。
ところが、裁判所が決定した更生担保権評価額はわずか4億2996万円。更生担保権評価額とは、更生手続にあたって担保を持っている債権者に、担保を処分しない代わりに支払う金額を言う。
この金額がGSに支払われる金額なので、債権者であるGSがスポンサーになればこの分が行って来いになり、他の候補に対するアドバンテージになる。他の候補はこの行って来いの額分だけ、GSを上回る金額を提示しなければならなくなるからだ。
それがわずか4億円強。金額面でセリ負けたことがGSが早々に断念した原因なのではないか、というのである。
何はともあれコースはPGGIHが落札した。「フラッグシップコースとして大切にしたい。P-capに組み込むかどうかは今後検討する。P-capは所属コースの支配人が、その会員がプレーをしに行くコースの支配人に、直接フォローを頼むシステムで、いわゆる共通会員権的なシステムではない。
P-capに組み込まれると他のコースから多数の会員が流れ込んでくる、というのは大いなる誤解」(PGGIH)という。今後の運営手腕に注目しよう。
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