硫黄鉱山跡地に、10年ごしの土壌改良を経て誕生したボナリ高原GCの経営会社が、3月20日、民事再生手続きの開始を申し立てた。国から表彰まで受けた注目コースが破綻した原因はなんだったのか。
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どうなる、ボナリ高原GC
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とかく環境破壊のモトと言われがちなゴルフ場開発だが、草木1本生えない土地に、樹木を蘇らせたことが評価され、緑化功労者としてコース開発者が林野庁から長官賞を受け、コースデザインも高い評価を受けていたボナリ高原GC。
福島県猪苗代町の同GCは、江戸・慶長年間開山の沼尻鉱山跡地に作られたゴルフ場。時代の流れには勝てず、経営会社の倒産で、昭和43年閉山に。労組が未払い賃金のカタに沼尻スキー場の経営権や会社保有の不動産を取得、順次売却を進めて最後に残ったのが荒涼たる鉱山跡地。
地元の名士で会津松平藩13代当主松平保定氏が、縁戚関係にあった長崎大村藩33代当主大村純毅氏を通じ、大村湾CCオーナー・辻田昌徳氏に再生を依頼することになる。
米国から芝の専門家を呼び、10年がかりで土壌改良を進め、オープンに至ったのは平成12年6月。大村湾グループが用地を取得してから15年、閉山から32年後のことである。
林野庁から辻田氏が表彰されたほか、マスタープランをウィル・ショウ、コース設計をトレント・ジョーンズ・シニアに師事したロナルド・フリームが担当しただけあり、コースデザインの評価も高い。
一方、倒産した経営会社はゴルフ場買収の国内新興勢力の一角だったレイコフ。東証マザーズ上場の不動産会社である。
レイコフは不動産鑑定士と一級建築士の資格を持つ山本誠氏が、平成元年1月に不動産鑑定事務所として創業。その後不動産コンサルタントや不動産投資ファンド事業、ホテルやリゾート施設など不動産投資事業に業務範囲を拡大していく。
ゴルフ場ビジネスへは、平成18年3月、民事再生手続き中だった、第三セクターのクラシック島根CCのスポンサー就任によって参入している。破産手続中だった富士河口湖GCの買い受け先に内定したのもこの時期。
東横インが、買い受け先に内定しながら、地主との調整に難航していた矢先、不正改造問題で買い受けを辞退したための“繰り上げ当選”だった。が、2年経った今も地主との調整はついておらず、今回の民事再生でレイコフも下り、別の候補と交渉中。
ボナリ高原GCを大村湾グループから買収したのはその2カ月後。レイコフがその資金力でロッジ建設をまかなうはずが、実現を見ないままわずか2年で破綻。
買収後2年間は大村湾グループで運営を受託する契約だったので、支配人以下コーススタッフはオープン当時のまま。
コースには総額37億円の担保が設定されているが、「グループ会社も保有不動産の数も非常に多く、今はまだ、錯綜しているグループ会社間相互の貸し借りや、担保の設定状況などを調べて交通整理をする作業に当たっている段階。
担保権者との交渉はおろか、コースをどうするかもまだ検討出来る段階にない」(申立代理人の古川昌平弁護士)という。今度こそ、安定的に経営を任せられるスポンサーが見つかることを祈ろう。
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