北京オリンピックを控えて、アメリカのゴルフ界が、今アジアに熱い視線を送っている。サブプライム問題もあるのだろうが、アメリカのゴルフ界は、成熟市場にあり、ここ数年、成長が止まった感じであった。そうしたなかで、ビッグマーケットになりそうな、アジアに目を向け始めたというわけだ。
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(上から)リャン、シン、マークセン
の3人がマスターズに出ていた
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まず注目されたのが、今年のマスターズ。実は、特別招待枠でアジアから3人の選手が参戦していたのだ。
これまで、特別招待枠というのは、日本の賞金王が、ワールドランキングで50位以内に入っていなかった場合に使われていたもの。いわば、テレビ放映権料をもらっていることのお返しに、1人は招待しましょう、という感じのものだった。
それが、日本人プレーヤーが、常にランキングの50位以内に入ってくるようになると、その1人の枠を、他のアジアのプレーヤーなどに使っていたが、今年はそれが一気に3人に増えたのだ。
「私たちは、アジアや世界の他の地域で、(アマチュアの)ゴルフが最も大きく成長するチャンスがあると信じている。R&Aや他のゴルフ団体と協力して、その国を代表する伝説のプレーヤーやヒーローを生み出すことによって、ゴルフの成長を促したい」(オーガスタナショナル・ビリー・ペイン会長)
…ということで、中国のウェン・チョン・リャン、タイのプラヤド・マークセン、インドのジーブ・ミルカ・シンの3人をマスターズに招待していたのだ(結果は、予選通過はシン1人で25位タイ)。
これに加えて、今度はPGAツアーのティム・フィンチェム・コミッショナーが、世界選手権シリーズのワールドゴルフチャンピオンシップ(WGC)を、中国で開催しようと画策している。
実は2007年から、ワールドカップが中国で開催されている。この大会は、過去WGCのイベントだったが、現在はWGCから外されてしまった。
それもあってか、早ければ2010年から、WGCの試合を新たに中国で開きたいと考えているようだ。
具体的には、まだ決まっていないが、どうやら、ヨーロッパツアーの開幕戦であるHSBC選手権をWGCのイベントとして、そのまま上海で開催したい意向だという。
「アジア地域におけるゴルフの成長は重要な要素になることは間違いがない」(フィンチェム・コミッショナー)ということで、アジアに向ける目は半端ではない。
アメリカのゴルフ人口は、2700~2800万人前後。世界のゴルフ人口は多く見積もっても5000万人に達することはない。
ところが、人口の多いインド、中国で、ゴルフブームに火がつけば、一気に世界のゴルフ人口が、2倍、3倍に膨れ上がる可能性がある。
大きく見れば、中東もアジアの一画となるのかもしれないが、いくら、ドバイあたりで、ゴルフ場が増えても、市場の可能性としてのパイの大きさは、東アジアには遠く及ばない。
韓国は、パク・セリやチェ・キョンジュがゴルフブームに火をつけ、その後続々と男女の有力プレーヤーが生まれて、今や一大勢力になりつつある。
こうしたヒーローが、中国をはじめアジアの他の国でも誕生することを、アメリカのゴルフ界が、熱く望んでいるということなのだろう。
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