6月8日、ドラコン王としても知られる小達敏昭プロ(40歳)がボクシングのリングに立つ。最近ツアーで見かけないなと思ったら、プロボクサーに転向? というのではない。だが、遊びで立つわけでもない。ガチンコ、本気で殴り合うリングだ。どうしてそんな世界に飛び込むことになったのか。
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ボクシングの練習で腰痛が消えたと小達
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小達といえば、国内ツアーで2勝の実績を持つ飛ばし屋で、PGA公認のドライビングコンテストをはじめ数々の大会を制してきたドラコン王。また、女優の故・夏目雅子さんの実弟ということでも注目される存在だが、ここしばらくはアキレス腱炎や腰痛など故障続きでツアーから遠ざかっていた。
だが、ドラコン競技と自身が経営するゴルフクリニックに、忙しい毎日を送っていたはずだが……。
その小達が6月8日、東京・新宿でボクシングのリングに上がることになった。「ザ・おやじファイト」というボクシングファンには知られた興行で、リングには33歳以上のボクシング経験者(プロアマ問わず)やジム練習生が資格テストを受けた上で上がる。
2分3ラウンドの試合時間で、ヘッドギアを着けてのファイトなので、主催者は「スパーリング大会」と謳っているが、元WBC世界フライ級王者の小林光二氏など、かつてのトップランカーも多数出場して、マジに勝負する熱いリングなのだ。
小達は大学時代にフィジカルトレーニングでボクシングジムに通ったことがあるという、実は“ボクシングおたく”。高校時代からボクシング雑誌を定期購入していたそうだ。そして昨年暮、ボクシング観戦の会場で手にした「ザ・おやじファイト」のパンフに書かれた出場資格を見て、子供の頃からの夢だった「リングに上がりたい」という思いに火がついてしまった。
「自分でも上がれる」。さっそく主催団体を訪れ、パンチと耐久力のテストを受けたところ、日頃からのトレーニングのおかげで一発合格。リングでファイトすることが認められた。ところが、今年1月から始まった本格的なボクシング練習は想像を絶する厳しさだった。
「こんなのだったら、見るだけにしておくんだった」と何度もくじけそうになったと語る。
それでも歯を食いしばってこられたのは、リングへの「夢」と「しょせんプロといってもゴルファーはこの程度か」と思われることに対する、プロゴルファーとしての意地だった。今でこそタイガー・ウッズのようなフィジカルエリートがいるが、それでもゴルファーにはアスリートとして“ヤワ”なイメージがある。
小達には昔からそうしたイメージに対する対抗心があった。「僕にとってゴルフは天職ですから」。その天職をなめられるわけにはいかないというのだ。そうしてハードな練習を週3日のペースで続けているうちに、小達が長年悩まされてきた腰痛が消えた。もちろん足腰には強靭なバネのような筋肉がついた。
「今はツアーでも戦える自信が戻ってきたんです」とボクシングのおかげで、リングの向こうにグリーンが見えるようになった。小達は来年、ツアーに再挑戦するつもりだ。それにしても、ケタ外れのパワーで将来を期待されながらも度重なるケガ。
さらに今月10日には母親のスエさんが逝去するなど、心が折れそうななか、小達はずっと闘争心を失ってなかった。来年、どんなゴルファーとして戻ってくるのだろうか。楽しみにしたい。
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