「ゴルフを五輪の正式種目に」。米ツアーと欧州ツアーの首脳が国際オリンピック委員会(IOC)のロゲ会長とIOC本部があるスイスのローザンヌでこのほど会談、要望した。正式競技への追加は7年間の待機期間があるため、認められるとしたら最短で2016年になる。
ゴルフがオリンピックで行われたのは1904年、米国セントルイスでの大会が最後。1996年のアトランタ大会では競技種目に決まりかけていたが、あと一歩で頓挫。原因は会場をマスターズの舞台オーガスタナショナルGCにしたこと。
オーガスタを人種、女性差別の象徴として、当時のIOCのアニタ・デフランツ副会長が反対したのがその理由だった。同副会長は、米国の黒人女性で五輪メダリスト、アイビーリーグ出身者でもある。超大国の米国が彼女のバックにあるだけに、他の委員たちは沈黙せざるを得なかったともいわれる。
IOCへの交渉窓口は国際ゴルフ連盟(IGF)のみ。当然ながら全米ゴルフ協会(USGA)と英国ゴルフ協会(R&A)がその中心として活動しているが、USGA会長のデビッド・フェイ氏は、この4月に次のように話している。
「この問題はプロツアー抜きでは成功しない。だがまだアトランタ以降プロツアーから支持をもらっていない」
そうしたなか、PGAツアーのティム・フィンチェム氏が、欧州ツアーと歩調を合わせてIOC会長と先の会談を行った意味は大きい。
JGA国際委員長の川田太三氏は、「もちろん正式種目になることは歓迎すべきことだが、今までも水面下ではいろいろな動きがあった。世界の中では熱心な国もあれば(例えばフランス、スペイン、スウェーデンなど)。だが、IOCが途中からプロ志向に変わったもののプロたちはメリットを感じなくなっている」という。
五輪については、タイガー・ウッズは2000年に、「五輪が自分にとって高い優先順位になるとは思われない」と発言。
一方、フィル・ミケルソンは昨年中国で行われたトーナメント出場の際こう主張している。「世界の国々が五輪種目になるよう働きかけるべきだ。そうなればより世界的なスポーツになる。ただ、プロは国を代表してプレーできる大会はいくつも機会がある。アマチュアだけのほうがいい」。
タイガーとミケルソンに微妙に温度差があるが、タイガーのコメントは8年も前のものであり、現在の心境を改めて聞いてみたいところだ。
ゴルフ界では2016年の正式種目決定に向けて動き始めたが、奇しくも2016年の五輪では、「東京」も招致の方向で動いている。
政府は昨年9月閣議で了承、招致委員会(会長・石原慎太郎都知事)では、福田康夫首相を最高顧問とし、国を挙げて応援している。
東京開催でゴルフが正式種目になれば、ゴルフ人気の一層の上昇が見込まれるだけに期待は大きい。だが、東京都も築地市場の移転問題、新銀行東京の問題を抱えているだけに、越えるべきハードルは低くはない。
その2016年開催に立候補している都市は、シカゴ、マドリッド、プラハ、リオ、ドーハ、バクーそして東京の7都市。この絞り込みがこの6月4日に予定されており、来年10月2日に最終決定される。
2006年に行われた世界アマチュアゴルフチーム選手権では男子は75カ国、女子は51カ国からの参加があり、前出の川田氏は強調する。
「これだけの国々が参加しているだけでも、五輪の正式種目になる資格は十分ある。他のスポーツでこれほど多くの国が参加しているのはそう多くはない」
現在、日本ゴルフ協会はじめ国内の関連団体は、静観の構えだが、東京開催と正式種目決定を各団体が一丸となって支援してはどうだろうか。
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