国内女子ツアーは先々週のニチレイPGMレディスまで15試合(全37試合)を終えた時点(6月22日)で、まだ複数優勝者が誕生していないという史上初めての様相を呈している。例年ならシーズンの中心選手、つまり賞金女王レースを引っ張る選手が飛び出す頃なのだが……。男子ツアーもここまで外国勢のプラヤド・マークセンがただ1人2勝を挙げただけ。そこにはどんな理由があるのだろう。
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ツアー序盤からイケイケのP・マークセン
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まず、国内男子は先々週まで8試合を終えた時点で、2週連続優勝を果たし唯一の複数優勝者となったP・マークセンと、日本プロを制した片山晋呉が賞金レースを一歩リードしている。
ただし、男子ツアーの場合、片山や谷口徹、谷原秀人といった実力者は、例年、シーズン中盤までは海外メジャーに照準を合わせたスケジュールのため、この時期までに複数優勝をすることは少なく、“馬群から抜け出す”選手も見られないことが多い。今季もマークセン以外に複数優勝はなく、混戦はシーズン終盤まで続きそうな気配だ。
一方、女子ツアーでは、例年この時期には複数優勝者が現れ、マネーレースを引っ張る選手が登場していた。開幕前、その候補に挙げられていたのが、横峯さくらであり、諸見里しのぶだった。ところが、その2人はともに未勝利。代わって、週替わりに15人ものヒロインが誕生する展開となった。
こうした序盤の様相について、日本女子プロゴルフ協会理事の小林浩美プロは大きく2つの理由を指摘する。それは「時代の流れ」と「世界を見据えた目標設定」というポイントだ。
「毎週優勝者が違うというのは、実力のある選手層が厚くなった結果でしょうけど、長い目で見れば、大きな時代の流れがあって、賞金女王争いが混とんとする時代と、そこから強いリーダーが抜け出す時代が交互にあるんじゃないですか」(小林プロ)
確かに、時代をさかのぼって検証すると、2000年に入ってからは6年連続賞金女王の不動裕理を筆頭に宮里藍、大山志保、上田桃子と年間5~6勝も重ねる選手が続出したが、それ以前は混戦模様。99年には村口史子が同3勝で、96年には福嶋晃子が同2勝で、それぞれ賞金女王になっている。
上位陣の「団子レース」は、次の時代を迎えるに当たっての必然なのか? であるなら、ここから誰が飛び出すのかが楽しみになる。
団子レースのもうひとつの理由、「世界を見据えた目標設定」とは、「今の選手は、世界で一番のゴルフがどんなものなのか、いろんな機会で接することができる。実際に見たり、映像で、あるいはコーチを通して……。そこから世界を見据えて、より高い目標を設定し、自分たちのゴルフを積極的に変えていこうとする姿勢があるから、好成績を長く続けることが難しんじゃないですか」と分析する。
実際、昨年、国内メジャーの日本女子プロで2週連続優勝を果たし、周囲からは「これをきっかけに一気に勝利を重ねるのでは」と見られた飯島茜は、実はその直後にスウィング改造に乗り出していた。彼女もやはり、より高い目標を設定し、シーズン途中の調子のいいときにスウィング改造を、あえて行ったという。
また、近年は、特に韓国から国内ツアーを席巻する勢いのプレーヤーが次々とデビューしているが、韓国勢が優勝を独占していないのは、韓国勢がその後低迷したからではなく、日本選手側が時代に沿って変革を遂げてきたからではないだろうか。
進化の過程にあるゆえ、強さの勢いを持続できない? そんな構図が見えてくるのだが、どうだろう。
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