5月末、R&Aからクラブメーカー宛に送達された文書「クラブヘッド内部のスプリング特性の解釈と評価の修正案」によると、ペンデュラムテストの測定位置がこれまでのフェース中心から今後はフェース全面に拡大されるという。これはさらなる規制の強化を意味するのだろうか。
いわゆるスプリング効果を規制するためR&Aが2004年に導入したペンデュラムテストは、鋼球をフェースにぶつけてフェースとの接触時間(CT値)を計測するもので、接触時間が長いほどスプリング効果が高いと判定され、CT値の上限は257μsと定められている。
ちなみに反発係数(=COR)は、以前行われていたキャノンテストによる計測値で、フェースにボールをぶつけたときの衝突前後の速度比を表し、COR値0.830がCT値257μsに相当する。
さて、SLEルールを巡る混乱がようやく収束したこの時期に、測定方法を厳格化する理由は何か。最近のドライバーは、周辺部を薄肉化することで高反発領域を拡大する設計が主流となっている。
このため、一部では「フェース中心では適合でも周辺部が高反発のクラブの存在をR&Aが認識した」ためではないかという憶測も流れている。
これに対してクラブメーカーは、「部分肉厚設計はスウィートエリアを拡げるための技術で、意図的に作ることはあり得ない」(A社)、「フェースのどの部分でも257μsを超えていない」(B社)とする一方で、「技術的には可能、意図せずできてしまうケースもあるかも」(A社)とクラブの存在の可能性そのものは否定しない。
「R&Aが動くということも含め、一般論として、そうしたクラブが存在する可能性は高い。ペンデュラムマシン程度の力ではたわまない構造にしておいて、フェースセンターから少し離れたところの初速を高くすることは可能。ただし、あれだけの狭い面積ですからせいぜい中心より1~2パーセント」と効果そのものを疑問視するのはクラブ設計家の高橋治氏だ。
だとすればR&Aの意図はどこにあるのか。
現行ルールでは、スプリング効果について3項目の規定を設けている。元々ペンデュラムテストを規定しているのは第1項だが、今回の修正案の目的は第2項<(前略)スプリング効果に不当に影響を与える意図、あるいは効果を有する機構や技術を組み込んではならない>を補足することにある。
「第2項の審査はこれまで構造やデザインで判断していましたが、異形ヘッドや異形フェースなど評価がますます難しくなり、より客観的な方法として任意の位置でのペンデュラムテストが採用されます」(日本ゴルフ協会)
新しい計測方法は、早ければメーカーからの意見聴取期間が終わる7月1日から採用される。現在適合リストに掲載されているクラブが再審査されることはないが、今後のクラブ開発には多少なりとも影響を与えることになろう。
高反発規制問題、まだまだ尾をひきそうな気配だが、注目したい。
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