全米女子オープンではソウル五輪の年、1988年に生まれた韓国の88(パルパル)世代が大活躍した。優勝したパク・インビをはじめ3位タイのアンジェラ・パークやキム・インギョンなど昨年LPGA入りした「パク・セリキッズ」と呼ばれる小娘軍団が選手層の厚さと存在感を見せつけた。一方の日本勢は上田桃子の13位タイが最上位。宮里藍が27位タイ、横峯さくらが51位タイ。一体米ツアーでの日韓選手の違いはどこにあるのか?
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語学堪能、典型的なアメリカ娘?
のパク・インビがV
日本では考えられない試合だった
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優勝したパク・インビの母親キム・スンジャさんが次のように語る。
「一言で言えば韓国選手にはハングリー精神があると思います。特に88世代は中・高校時代からプロを目指して米国や南アフリカへゴルフ留学する例が多い。私たちも娘(パク・インビ)が中学1年の時に一緒に米国へ行き、ブッチ・ハ―モンのゴルフアカデミーに通いました。そこで一生懸命英語とゴルフを学びました。私も娘に負けないように英語を勉強し、夫は韓国で私たちのために仕送りをしてくれたんです。語学力ではハンディが全くありません」
確かに米ツアーにおける日韓女子プロの違いはゴルフ技術よりもまずは英語力だ。一説には米国で成功するには語学力30パーセント、ゴルフ技術70パーセントが鍵だとも言われる。この点でなんの問題もないのが韓国勢なのだ。
語学力だけでなく、米国社会への適応力もある。韓国人選手の場合には同じホテルや宿舎に集まることが多く、食事も地元にある韓国レストランや中国料理店、日本レストランなどに集まり、賑やかに食事をすることが日常的になっている。
パク・セリが全米女子オープンを制して、この10年、多くの韓国人選手が米ツアーで活躍してきたが、ツアー情報やツアー会場に近い町のレストラン情報だけでなく、どのくらい韓国人が住んでいるか、有力な韓国人後援者がいるのかどうか、韓国人が行ける教会があるのかといった生活情報も共有している。
全米女子オープンの行われたミネアポリスは日本からの直行便がある町とはいえ、日本人の情報は少ない。宮里藍や上田桃子は日本食レストランを探すのもひと苦労だった。これに比べてパク・インビやアンジェラ・パークなどは、コースから近い穴場のコリアンレストランで力を蓄えた。
しかもメンタル面でも強い動機がある。韓国日刊スポーツ紙のチョン・ビョンチョル記者が次のように言う。
「韓国選手は自分のゴルフのためだけでなく、財政面でも献身的な犠牲を払ってくれた両親や親戚などのためにも絶対成功しなければならないという責任感に溢れています。しかも韓国代表であるというプライドがあり、それがプレッシャーに強い選手を作り出しているのです」
その良い例が米ツアーに参加しているジャン・ジョンだ。ジョンはマーカーやボールに大韓民国の国旗である大極旗のロゴを使っていることでも有名だ。
そんな88世代に、もうひとつ共通するのがライバル意識。
「彼女らは『アニカやオチョアには負けてもしようがないが、同じ韓国人、特に88年生まれの同期生には絶対に負けたくない』という競争意識が強い。この意識がお互いを強くしている要素かもしれません」(チョン記者)。
現在米ツアーに参加する韓国人選手は45人。選手層の厚い韓国人のビジネスライクでかつ家族主義的なライフスタイルが成功の鍵なのかも知れない。
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