世界が北京オリンピックに沸いていた8月。米ツアーでは45歳のビジェイ・シンが、WGCブリヂストン招待と、計4戦あるプレーオフの第1戦・バークレイズと第2戦のドイツバンク選手権に2連勝。ついに今季の賞金王レースのトップに立った。俄然賞金王の可能性が高まってきている。
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このまま決まりか? 45歳のV・シンに注目
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シンは、昨シーズン初戦のメルセデス選手権と3月のA・パーマー招待に優勝し、2勝を挙げたものの、その後は鳴かず飛ばずで、さすがの鉄人もそろそろ歳かと思われていた。
それが8月初旬のブリヂストン招待で1年半ぶりに優勝したかと思ったら、フェデックスカップ・プレーオフ第1戦、高額賞金のバークレイズでもS・ガルシアに競り勝ち、さらにドイツバンク選手権では、最終日に一気に首位に立って他を引き離し、優勝した
これでシンはついに賞金獲得額645万ドル(1万ドル以下四捨五入)となり、タイガーを抜き去って賞金ランキングのトップへ躍り出た。タイガーは578万ドル、これにP・ミケルソン(467万ドル)、ケニー・ペリー(452万ドル)、P・ハリントン(430万ドル)、S・ガルシア(401万ドル)と続いている。プレーオフは残り2試合。
もちろん、こうした上位プレーヤーの誰かが2連勝すれば賞金王となる可能性が残されているが、シンが3勝を挙げたことで、賞金王争いがクライマックスへ大きく動いたといえるだろう。
しかも45歳の賞金王というのは、米ツアーの最年長記録。プレーオフ優勝の1000万ドルのボーナスは賞金ランクには加算されないが、こちらもシンが圧倒的に有利であることは間違いない。
「誰もが望むように自分も勝ち取りたいと思っている。新しいポイントシステムでは、まだ抜かれる可能性はあるが、いずれにしても自分はポイントのトップにいる。あとは安定したプレーをするだけ」と賞金王だけでなく、プレーオフ優勝も狙っているのだ。
その自信はどこから来ているのだろうか。
「少し前からパッティングが良くなった。過去、マスコミもファンもみな私のパッティングについて話したり、書いたりしている。私は何百もの手紙や電話をもらったが、その誰もが私のパッティングを良くできる、などと言ってくるんだ。そんなことをずっと刷り込まれると、自分でも自分のパッティングが上手くないのじゃないかと思えてくる。
それで、考え方を変えることにして、自分は最高のパットの名手だと思うようにした。そうしたら、素晴らしいパットができるようになった。こう思う限り、これからもたくさんの試合に勝てるはずだ」とメンタル面の変化を語っている。
さらに、ドライバーの飛距離を見る限り、シンはこのところ攻めのゴルフに転じている。米ツアー全体としては、飛距離よりもショットの正確性を重視するなかで、シンは今年平均296.8ヤード(27位)も飛ばしているのだ。
この数字は昨年より3ヤード伸びたものにすぎないが、8月に入ってからはブリヂストン招待で平均316ヤード、予選落ちした全米プロとウィンダム選手権でも、それぞれ308.8、307.3ヤードを飛ばしている。
攻めるだけ攻めて、全米プロのようなリカバリーのできないような難しいセッティングとなると、予選落ちというある意味ギャンブル的な戦いぶりになっているのが不安要素ではあるのだが。
“攻めダルマ”に転じた45歳。シンの賭けの目がどう出るかに注目したい。
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