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週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。
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週刊ゴルフダイジェスト 9/23号
2008/9/11更新
芝からバイオエタノール抽出、肥料作り、
刈り芝使った新技術が話題に

 コース管理に欠かせないのが芝刈り。それをゴミとして廃棄していては「ゴルフ=環境に悪いもの」という世間のイメージは払拭されない。だが、刈った芝(刈粕)からバイオエタノールを生産したり、コースに放置して肥料とする新技術が完成すればゴルフ場にとっても朗報だ。いまこの新技術に注目が集まっている。

 バイオエタノールはサトウキビやトウモロコシから作られるのが一般的だ。エタノールは木材や紙、芝などからも生産できるが、セルロース(繊維質の炭水化物)を酵素などで分解してから糖を抽出せねばならず、手間がかかるとされていた。

 だが、環境ベンチャー企業の(株)コンティグ・アイは、岐阜大学応用生物科学部環境微生物工学研究室の高見澤一裕教授との共同研究で数十種類の酵素の中から2種類を組み合わせ、高い効率で糖に変換する方法を開発した。

 高見澤教授によれば「乾燥芝1トンあたりでエタノール192リットルほど生産できる」という。OECD(経済協力開発機構)はトウモロコシ1トン当たりで396リットルのエタノールが生産でき、サトウキビでは85リットルと発表している。それらと比較して、新技術は両者の中間の生産効率と言える。

 もうひとつの利点は高い二酸化炭素削減効果。資源エネルギー庁の発表によれば、セルロース系のエタノール生産は生産過程で残渣(残りカス)をボイラー燃料として利用できるなど、化石燃料の使用を最小限に抑えることができるという。

 刈粕をそのまま放置して肥料として活用する「グラスサイクリング(grass=芝とrecycling=リサイクリングを合わせた造語)」という技術もある。

 ゴルフ場では管理に手間のかかるグリーンを除き、フェアウェイ、ラフの芝は刈り取ったあと、スイーパーという機器を使って収集し野積みしていた。だが、米国では1990年頃から刈り取った芝を放置・肥料化するグラスサイクリングが普及している。

 全国120以上のコースのゴルフ場を経営するPGMグループ環境サービスマネジャー・池村嘉晃農学博士によれば、「グラスサイクリングによって、20~35パーセント程度の肥料を減量できる」という。1キロのチッソ肥料を作るのに、1~1.6リットルのガソリンが必要。

 また、1キロのチッソ肥料を作ると、二酸化炭素が3キロも排出される。こちらも地球温暖化防止に貢献できるというわけだ。

 全国134コースの管理をするアコーディア・ゴルフは本誌取材に対し、「グラスサイクリングや刈粕の一部を堆肥化する方法を採っているが、大部分は産業廃棄物として処理している。その量は乾燥した状態で400~600トン」としており、「バイオエタノール生産化には興味がある」と答えている。

 ただし、エタノール、グラスサイクリングともに課題がある。

 エタノール生産には高い設備投資費がかかる。コンティグ・アイ代表取締役の鈴木繁三氏によれば、「1日5トンの処理能力を持つ標準的なプラントの設置費用は8000万円」という。

 宇部72CC環境管理統括部長・成田勇氏は「刈粕、雑草、枯れ枝などで年間2000~3000トンが排出される」と話す。処理費用は「年間1000万~1500万円」とのこと。これを18ホールのゴルフ場で算出すると、廃棄量500~750トン、処理費用250万~375万円になる。

 全国26コースの管理を行うグリーンシステム(株)では「コスト面での採算が合えば、導入の可能性もある。将来的に県や市などの自治体と一体になって取り組む必要がある」とコメントしている。

 グラスサイクリングも「刈込頻度が追いつかない場合はブロアーで一部をフェアウェイからラフへ飛ばしている」(池村博士)という。だが、どちらの技術も刈粕が貴重な資源となる可能性を秘めている。ゴルフ場がエコの最前線になる、そんな日が来るのは近いかもしれない。

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