1万ラウンドに1回。ホールインワンの確率のことだが、この8月末に山梨県韮崎市のゴルフ場を舞台にした保険金詐欺のグループ3人が甲府署に逮捕された。事件は3年前の2005年1月下旬、共犯者の女性(現在は退職している)が勤務していたCCグリーンバレイで起きた。主犯格の46歳の男が、加入する東京都内の保険会社からホールインワンをしたと偽り保険金100万円をだまし取ったというもの。その顛末とは――
事件の舞台は同ゴルフ場白樺コースのパー3。当時の天気は快晴が続き、平均気温は2.3度。主犯の男は、友人の男性と2サムでプレー。知人の女性キャディと謀って、ホールインワンを達成したと偽り、ゴルフ場に報告、うその証明書や祝賀会などの架空の領収書を保険会社に提出して保険金をせしめた。
事件捜査の端緒は、約1年前、甲府警察署への匿名の通報だった。警察によると、当初は主犯格の名前しかわからず、1年かけて地道な内偵が始まったという。
同署広報担当者は、「こういった事件は、ほとぼりがさめた頃、犯人が自慢げに事件について話すことがきっかけになる」という。
逮捕直後、2人の共犯者は詐欺容疑を認めたが、主犯の男は「ホールインワンは実際にあった」と否認していたが、今は認めているという。
昨年このゴルフ場の支配人になった馬場淳一氏は次のように話す。
「私どもも被害者のひとりです。事件自体は残念なことですが、再発防止に向けて対策を講じています」
警察も同様にゴルフ場も被害者のひとりとして見ているというが、ここ最近起きたホールインワン詐欺事件は、昨年10月大阪の58歳の男が、奈良県のゴルフ場で、やはり100万円をだまし取っている。このときも、やはり匿名電話がきっかけで逮捕されている。この男は懲役1年2ヵ月、執行猶予3年の有罪判決を言い渡されている。
ゴルファー保険は、プレー中のケガや用品の破損・盗難、ホールインワンやアルバトロス達成時の祝賀費用などを補償するもの。ホールインワン費用補償で100万円を支払われる場合の保険料は年額約1万7000円前後ぐらい。このゴルファー保険には今では4人に1人が加入しているといわれる。
ある損保会社は「提出書類に問題がなければ、当然申請は受理せざるを得ない。警察の証明に基づく交通事故の保険金と異なり、仲間で口裏を合わせたり、ゴルフ場をもだますような手口に対しては、再発防止策といっても立てようがない」とも指摘する。
ホールインワンは、どの保険会社の契約でもキャディを付けることが条件になっており、セルフプレーでは証明書が発行できず保険金支払いの対象外になる。
また複数の保険会社と契約していても、どちらか最高額の保険金以上の額は支払われないことになっている。
事件が判明するのは通報によるものが多く、その背景には犯行を他人に話したいという欲求があるからといわれる。でも、犯行がこれでしか明らかにならないとしたら、抜本的対策が求められる。妙案はあるのだろうか。
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