農薬などに汚染された事故米が食用として不正に転売された問題は、先週、警察が関係箇所の家宅捜索を行うなどして、今後は司直の手によって裁かれることになった。この件では消費者の健康被害は報告されていないが、事故米と知らずに購入した事業者が製品の回収やその後の売り上げ減で大きな経済的被害をこうむっている。ゴルフ場でも、急きょ対応に追われたところが少なくなかった。
ゴルフ場が今回の騒ぎに巻き込まれたのは、事故米の納入先となった酒造メーカーの焼酎、もしくは同メーカーから原酒を購入していたメーカーの焼酎がゴルフ場でも扱われていたため。
そのなかには、焼酎好きなら知らぬ者のいない鹿児島の人気銘柄(薩摩宝山)もあれば、大手ビールメーカーのもの(さつま司、かのか)もあったため、全国で当該商品の販売中止や回収といった対応に追われることになった。
回収といっても、通常はレストランやショップの店頭から商品を引き上げるだけで済む(ショップでの購入者の追跡回収はほぼ不可能)のだが、鹿児島県では幸か不幸か8つのゴルフ場でゴルファー1人1人に連絡することになった。
農水省が、汚染米が焼酎の原料に使われた可能性があると最初に発表したのは今月8日のこと。その2週間ほどの前の8月25~27日にかけて、同県では、鹿児島県ゴルフ協会主催のコンペが全8コースで実施された。実は、そのイベントの協賛の1社が、件の酒造メーカーで同社製焼酎が賞品に提供されていたのだ。
コンペが開催されたあるゴルフ場では「うちの大会には、賞品として181本の焼酎が提供され、それをすべて64人の参加者全員に贈呈しました。ただ、ほとんどがうちのメンバーさんでしたから、問題が発表されるとすぐに、飲まないようにと連絡し、回収のお願いもしました」と、その後の対応を語る。
貰った参加者も事情はよく理解しており、いずれも穏やかな反応で、混乱といった事態にはならなかったそうだ。
一方、PGMグループでは現在、全国103コースでレストランを直営しているが、今回の件では、メーカー側から新聞発表よりも先に連絡を受け、その日のうちに当該焼酎の回収を終えたという。その数、1026本。うち620本はいわゆるキープボトルだった。
担当の料飲部によれば、「メーカーさんと交渉で、キープボトルは他社の同種のボトルを代替品としてご用意いただけることになりました」とのこと。
それにしても、このところ食品に関しては、中国などからの輸入物が増えたために汚染騒ぎが後を絶たない。こうした事態を受け、PGMグループでは以前から、食材は基本的に産地証明のとれる確かなものを使用。また、加工品はメーカーと直に取引し、情報交換を密にするなど、信頼性を第一に置いているという。
かつてはさほど気に留めなかった「食の安全」だが、実は案外コストのかかる分野になっていたようだ。
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