米ツアーとは違い、国内ツアーのいわゆるスポンサートーナメントでは、ほとんどの場合、放映権料は発生していない。放送局が主催者に放映権料を支払っているのは、基本的に日本オープンをはじめとする公式戦のみだ。ところがそのひとつ、日本プロ選手権に対し、中継の日本テレビでは今年から主催の日本プロゴルフ協会(PGA)に放映権料を支払わないことになった。
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09年は高額な放映権料が払われなくなった日本プロ選手権
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世界的にメジャーな競技のテレビ中継は、放送局にとっては魅力的なコンテンツ。そのため、テレビ局間で放映権の争奪戦が繰り広げられ、その結果、高額の放映権料が設定されるケースが多い。米PGAツアーも2年前に、放送局3社と4年間で総額8.5億ドル(当時、約900億円)もの放映権料を伴う放映権契約を結んだ、との報道があって話題になった。
ところが国内ツアーでは、基本的に日本ゴルフ協会や男女のプロ協会が主催する公式戦以外で放送権料契約が結ばれる試合はない。つまり、タダで中継できるのだ。
「もともと視聴率が5パーセント程度しか取れない割に莫大な経費がかかりますから、テレビ局側にしてみれば、中継してあげている、というのが本音。放映権料なんてあり得ない世界です」と大手広告代理店のある関係者。
それでも中継されてきたのは、主催者が最初からスポンサーを手当てして中継番組の企画を持ち込んでいるから。代理店によれば、60分番組では60秒のCM枠を6社に販売しなければならないのだが、主催者がこのうち半分程度を持参して、「これで中継してください」とテレビ局に申し込み、成立していることが多いという。
それでも、視聴率が低い番組であれば、高いCM料金を設定することはできず、テレビ局にとっては決して美味しいコンテンツではなかった。
そうしたなか、日本テレビはこれまで日本プロ選手権の中継に対し、PGAに高額の放映権料を支払ってきたのだが、09年は無料とすることを要請。PGA側もそれを呑まなければ、中継の存続も危ういと判断し、了承したという。
PGAに確認すると、「確かに、今年は支払われないことになりました」とタダになることを認めた。一方の日本テレビは、「その件(放映料が支払われない)に関する情報は、こちらには何も届いておりません」(総合広報部)との返事。
PGAが事実と認めたことを受け、さらに詳しい事情をPGAの木下久雄理事に聞いたところ、「日本テレビさんからは数年前から、1億円ほどの放映権料を無料にしてほしいとの要請がありました。08年も遼くんが活躍する前にそういう話があり、日本プロといってもその時は視聴率が取れませんでしたし、了解せざるを得ませんでした」と内情を語る。
同局は昨年9月の中間連結決算で37年ぶりに赤字に転落した。そのためあらゆるところでコストカットが図られているのだろう。「2年前の(日本プロの)沖縄開催のときもそうした話を耳にしましたが、今年は北海道(恵庭CC)で行われるので、製作費がよりかさむという事情もあったのでは」と競技運営の関係者は忖度する。
だが、国内ツアーの中継は今、男女とも平均10パーセントに迫る視聴率が期待できる。「ですから、今後ツアー側は金額の大きさはさておき、放送局側に、放映権という権利とそれに対する放映権料の存在をきちんと主張すべきなのでは」(競技運営を担当した広告代理店関係者)という声も。
“遼くん人気”の勢いに乗って、ツアーとテレビ局の力関係を見直すことはできないのだろうか。
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