新年早々、世界の経済に関しては、悪いニュースばかりが続いているが、米国PGAツアーは、意外と強気な姿勢を見せている。世界的なリセッションのなかにあって、今後その影響が出てくるのかもしれないが、少なくとも今年に関しては、アメリカのトーナメントには、さほど大きな影響はなさそうだ。
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選手たちは積極的に試合に出てほしいとフィンチェム・コミッショナー
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昨年末に発表された、米国PGAツアー「秋季シリーズ」のスケジュールでは、08年の7試合から、5試合に減少する可能性が高い。可能性、というのは、最終試合の1試合前の大会に関しては、まだ交渉中ということで、実際になくなるのが決定しているのは、ギンシュールメールの1試合だけ。
「新たなスポンサーを見つけることは、非常に難しくなっている」(T・フィンチェムPGAツアーコミッショナー)ということで、この交渉中といわれる試合が実際に開催されるかどうかは、まだわからないが、1~9月の「レギュラーシーズン」に関しては試合数の増減がなかったことを考えれば、今のこの時期にあって全体で2試合減は上出来といえるだろう。
これは、冠スポンサーの大半が来年2010年までPGAツアーとの契約期間を残している(テレビ各局との放映権契約は12年まで)ことから、表面上は試合数減となって表れなかっただけ、という見方もある。
そうした意味では、契約の更新交渉に入る今年が正念場となるのだが、フィンチェム・コミッショナーは、「アメリカでビジネスをしていれば、4~5年毎に悪い時期がやってくるもの。 だから、そのための準備はしておかなければならない。(中略)少なくとも現時点では、財務上私たちは安全な所にいる。だから、悪い年をどう乗り越えるのか考えるのではなく、経済が良くなった時に、他のスポーツに比べて非常に良いポジションにいられるように考えたい」と語り、交通費や福利厚生費などの経費削減は行うが、他のスポーツ団体とは異なり、PGAツアーは人員のカットを行わないことを明らかにしている。
その一方で、「ゴルフトーナメントは、本当によく運営されているが、それはもっと良くなるはず。私たちができる限りトーナメントを良くするために、トッププレーヤーたちには、もう少しいろいろな面で動いてもらうように奨励している」ともフィンチェム・コミッショナーは語っている。
つまり、今の不況を認識してもっと試合に出場してもらうとともに、スポンサーなどへの働きかけや、ファンやメディアサービスなどに積極的に参加するように促し、試合を充実させてゆく方針を打ち出している。
大きな試合ばかりでなく、マイナーな試合にもトッププレーヤーが出てくるようになれば、ゴルフファンとしては大歓迎だし、どんなファンやメディアサービスが行われるのかは定かではないが、試合が面白くなる分には、いうことはない。
それでTV視聴率が上がれば、放映権交渉もスムーズにいくし、スポンサーだって付きやすくなるのだから、米ツアーが意図していることは、間違っているわけではない。
しかし、フィンチェム・コミッショナーは、4~5年毎に不況の波がやってくると語っているが、今回の金融危機は大恐慌に近いもの。
加えて、米国男子ツアーは全体で、今回の危機で最も大きな被害を受けている金融関係から11の冠スポンサーと3つの後援スポンサー、そして6つの自動車関係のスポンサーを抱えている。そうした意味では、もう少し、考え方を変える必要があるのかもしれない。
PGAツアーは、レギュラーシーズンの賞金総額が、昨年の2億1490万ドルから2億2290万ドルにアップしたことを誇っている。その昨年ですら、米ツアーで賞金獲得した選手262人の平均獲得賞金が103万ドルと高い。これ以上、賞金アップや試合数を増やすことにやっきになる必要はないような気もしないではないのだが……。
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