東京・御徒町を中心に首都圏で4店舗を展開していた老舗ショップのシントミゴルフが15日に事業を停止、事実上の倒産となった。同社の倒産は同社だけの問題なのか、それともゴルフ用品の流通業界が置かれている状況を象徴するものなのか。関係者に話を聞いた。
シントミゴルフは1950年(昭和25年)創業の老舗。70~80年代には、積極的なチェーン展開(最盛期には11店舗)を進めるとともに、業界では珍しいテレビCMの宣伝も行った。
また、ベンセイヤーブランドなど独自クラブの販売やクラブ診断システムのいち早い導入などで、89年のピーク時には約107億円の売上げを誇った。
だが、その後は競合店の登場などで売り上げは落ち込み、店舗数も4店舗までに減少。03年には売上げ額も約28億円にダウン。ここ数年は赤字決算が続いていた。
スポンサーを探すなど再建を模索したのだが、「この経済状況ですから支援する企業はありませんでした」と事後処理を担当する田中省二弁護士。
田中弁護士によれば、昨年12月期で債務超過にはなっていたが、正確な債務額がわかるにはあと1か月ほどかかる。そして、2~3か月後には倒産手続きを行うことになるだろうと語る。その際には、資産を現金化する“倒産セール”も行うだろうという。
ところで、同社の不振の理由だが、競争の激化という経営環境以外に、「結局、オリジナルブランドの販売にばかり力を入れていましたから、メーカー側としては『それだったら……』という対応になったのは事実でしょう」(某大手メーカー)。
また、創業者の先代社長が05年に亡くなって以降、優秀なバイヤーや古参販売員が店を去ったことも響いたと語る流通関係者も。
さらには、「ここ数年は韓国の大手買付業者に支えられていた部分があったようです。ところが、韓国景気の大幅な後退で、その量が昨年激減。それがきっかけになったようです」という話も。
韓国バイヤー(並行輸入業者)は御徒町で仕入れることが多いようで、周辺には他にも韓国の景気後退の影響を受けた店もあるようだ。
もっとも、同じ御徒町に本店を置く二木ゴルフは昨年、過去最高の約258億円(前年比0.3%増)の売上げを記録。シントミゴルフの事業停止の4日後、取引業者などを招いて、都内で盛大な新年会を開催した。
「9、10月の売上げはダウンしましたが、11、12月は各メーカーとのタイアップで新モデルのフェアなど拡販を行い、売上げを取り戻しました」(西脇弘専務)。同専務によれば、昨年はウェア類の販売が好調で、売上げに大きく貢献したという。
ウェアは、どのショップも昨年は好調だった。だが、そのウェア類は、従来は一部で委託販売もできたが、現在はすべて買取販売。
そのためバイヤーの能力や在庫を残さない営業など、よりシビアな販売力が問われるようになった。こうした厳しい経営環境から、淘汰の時代が始まるのだろうか。
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