大不況の影響を上手くソフトランディングができるかと思われたアメリカの男女、シニアツアーだが、今回の不況の波の余波が出てきた。大会日程発表後に消滅した大会が出てきて、これにPGAツアー側が提訴するという動きが表面化したのだ。
昨年アメリカで4つのプロトーナメントの冠スポンサーとなっていたギン・リゾートが、すべてのスポンサーから下りることを発表した。
「簡単な結論ではなかった。しかし、諦めざるを得ないところまできてしまった」とロバート・ギーベル・ギン開発の社長は語り、同時にLPGAの試合の資金源となっている不動産販売とマーケティング部門を「営業赤字のため」に業務を停止すると発表した。
もっとも今回の発表は、青天の霹靂ではなく、昨年時点で、男子ツアーのギン・シュールメール、女子のギン・トリビュートの冠スポンサーを降り、「2009年以降は、スポンサーにとどまっていられる状況ではない」とギーベル社長は語っていたのだ。
つまり、残るシニアのギン選手権(4月)と女子のギンオープン(同じく4月)も難しいと考えられていたのだ。
今回の世界不況の発端となったのは、アメリカの不動産バブルがはじけたことで、不動産業をメインにするギンが、スポンサーを続けていられること自体がおかしかったといえるだろう。
そんななかで、PGAツアーはシニアのギン選手権のスポンサー契約が2011年まで残っているとして裁判に訴えたのだ。
「法的な手段を取らざる得ないことは残念だ。しかし、ギン社との契約を通して、私たちのメンバーに保障されているものを回復させるには、こうするより方法がなかった」とタイ・ボートウPGAツアー副会長は語っている。
現実には、ギン社との話し合いの中で、落とし所を探してゆく模様だが、PGAツアーとしては、ここで毅然とした態度をとってゆく必要もあった。それは、ギンと同様に契約打ち切りに踏み切るスポンサーが出てくる可能性があるからだ。
これまでは、契約を途中で打ち切られても、次のスポンサーがすぐに見つかり、そう大きな問題にはならなかったが、今は契約を盾にスポンサーを繋ぎとめている状況になっているだけに、ここでギンの途中解約を簡単に認めるわけにはゆかなかったわけだ。
ギンオープンを失うことになったLPGAでは、「直面する経済状況には非常に注意を払ってはいたが、ギンに関しては大丈夫だと信じていただけに、非常に残念だし、驚いている」とLPGAのキャロリン・ビべンス・コミッショナーは語っている。
ギンとの契約がどうなっているかは、明らかにしていないが、こうした状況になったのには、男子も含めて、LPGAにも若干の責任はある。
男子のほうは、もう10年以上も前からのことだが、LPGAのほうは、ビべンス・コミッショナーが就任して以来、各試合の賞金総額をアップさせるために、古くからのスポンサーを切り捨て、その時々の好況な企業をスポンサーにつけてきたという経緯がある。
男子のほうでは、一時IT産業が闊歩したが、その後それが金融関係に代わっていた。問題のギンもビベンス・コミッショナーが引っ張ってきたスポンサーだが、不動産バブルがはじけた今となっては、どうにもならないところがある。
男子も女子も、現在の世界不況の中で、これからが本当のサバイバルということになりそうだ。
何やら暗い話ばかりになってしまったが、そうしたなかで日本にとっては、少しは明るい可能性も出てきている。
ギンオープンが中止になることで、4月の中旬に試合のない週が2週続き、「まだ決めていないが、帰国する可能性は5分5分といったところ」と上田桃子の周囲から聞こえてくるように、海外での試合が少なくなれば、人気プロたちも日本での試合に参加するチャンスが増える。
特にギンオープンの前のナビスコが西海岸で開催されることから、日本にも帰国しやすい環境といえる。これで国内の試合が盛り上がってくれれば、不況の風も春風に変わるかもしれない?
|