不況が一段と深刻さを増すなか、2月17日、中小企業庁が緊急保証対象の指定業種の見直しを公表。ようやくゴルフ場、ゴルフ練習場、ゴルフ会員権業者が対象に加わった。この背景にあった事情とは――。
昨年10月末の制度開始以降、11、12月と2度にわたって対象業種の追加が実施されても対象にならなかったゴルフ関連業界が、3度目の正直で初めて対象となった。期間は2月27日から1年間。
この緊急保証制度は銀行などの民間金融機関から融資を受ける際、無担保で8000万円(上限)、有担保で2億円まで信用保証協会が保証をしてくれるというもの。最近3カ月の平均売上高が前年同期比で3パーセント以上落ち込んでいることも条件だ。
そもそもは、原油、穀物、資材などありとあらゆる原材料が高騰しているにもかかわらず、その分を販売価格に転嫁できない業者の救済を目的としていたので、10月末時点で対象となっていたのは545業種だった。
だが、不況の深刻化のほうが問題になり、昨年11、12月の業種追加で698業種に。そして今回の追加で760業種になった。
指定業種の追加が段階的になったのは、「その業界が、業界全体として不況の影響を受けているということを検証する必要があったので、指定の陳情は各業界単位でデータを出してもらう形をとった」(中小企業庁事業環境部金融課)ためだ。
業界全体が不況の影響を受けているというには、相当数の企業に売上データを提供してもらった上で、それを集計する必要がある。
「制度が始まった当時はその前3カ月というと7月から9月までのデータということになる。全体的には7、8月はゴルフ場はまだ好調だったので、直近3カ月平均で対前年同期比3パーセント以上の減収という基準がクリアできていなかった」(日本ゴルフ場事業協会・國文勝弥理事)。
ゴルフ練習場の場合は、首都圏よりも早く不況の影響を受けた地方の業者が、個別に中小企業庁に掛け合っていたが、業界団体を通じての陳情をするよう押し戻されるケースも多かったらしい。
ゴルフ練習場の業界団体である全日本ゴルフ練習場連盟は、中小企業庁側からデータの提供と陳情を促されている。「中小企業庁側もできるだけ多くの業種を指定したいという意向に、景気の悪化とともに変化していったように思う」(横山雅也専務理事)。
ゴルフ会員権の業界団体である関東ゴルフ会員権取引業協同組合も「前回追加対象にしてもらえなかったのは、優先順位が今回とは違ったためでは」(大塚重昭理事長)と見る。
ゴルフは「官」の世界ではとかく不本意な扱いを受けてきた。ゴルフは税法上はスポーツではなく娯楽と見なされて利用税を課税されているし、会員権は有価証券とは認められていない。
会員権業者の産業分類は、プレーガイドや場外馬券場、競馬・競輪の予想業などと一緒にされて「娯楽に付帯するサービス」である。
今回、このなかで、指定業種として認められたのは、このうちのゴルフ会員権だけだ。
「ゴルフは健康増進による医療費の削減に大きく貢献できるスポーツ」(桜ゴルフ・佐川八重子社長)であり、「ゴルフ場は地域の雇用の面で重要な役割を担っている」(関東のゴルフ場経営者)ことをアピールしたことも、今回の指定に少なからず影響を与えているのかもしれない。
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