かつてプロゴルフ界では「我孫子育ち」とか「川奈育ち」「廣野育ち」といったように、研修生時代からプロテストに合格するまでの所属クラブを出身地として紹介される例が少なくなかった。いつしか学生ゴルフ出身が主流となり、そうした呼称はほとんど聞かれなくなるなか、社団法人の我孫子GCが所属プロの養成に本腰を入れようとしている。
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プロ育成体制をとる我孫子GC
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「我孫子育ち」といえば、古くは林由郎、青木功を筆頭に、鷹巣南雄、海老原清治など多くの有力プロを輩出してきた。ジャンボ尾崎が登場する以前は、トッププロといえどもほとんどのプロがクラブに所属し、給料を得ながらプレーしていた。
その後、ゴルフの試合数が増えると多くの有名プロがゴルフ関連に限らず一般企業とも所属契約を結ぶようになり、そして現在は「フリー」の立場で複数の企業とスポンサー契約を結ぶのが主流に。
そうしたなか我孫子GC(千葉)では、今後所属プロを増やすべく、研修生を積極的に採用する方針となった。
「具体的な数値を定めたものではありませんが、その方向で努めていく方針です」と上原憲太郎支配人は多くを語らなかったが、実務に当たるヘッドプロの海老原プロは、今後のプロ育成に意欲を燃やしている。
「クラブのメンバーさんにレッスンするクラブプロだけじゃなく、ツアープロも育てたい。昔は我孫子所属のプロが活躍してメンバーさんに喜んでもらってた。でも今は、代替わりしたメンバーさんも増えてきたので、そうした若いメンバーさんに、自分たちのクラブのプロを応援する喜びとか、誇りを味わってもらえればね。だから、他からプロを引っ張ってくるんじゃなく、研修生から育てたい」(海老原プロ)
ゴルフコースの研修生というと、日中はキャディ業務を担当し、練習はその空き時間と夕方以降というイメージがあるが、同GCでは平日はコースの業務なしで、終日練習に打ち込める。
もっとも、このシステムについては、「研修生がキャディに付くとお小遣いをあげるメンバーが多いので、キャディの仕事を増やすとハングリー精神をなくすからとの配慮もあるのでは……」と話すゴルフ関係者もいる。
それはともかく、「研修生(4月から3人に)を応援してくれる体制になっているので、とてもありがたいですし、僕自身張り切っています」と海老原プロ。
ところで、他の名門クラブにはそうした動きはないのだろうか。
いくつかのコースに尋ねたが、ほかではそうした方針は聞かれなかった。ただし、霞ヶ関CCは10年ほど前から、研修生はプロテスト合格後も希望すれば5年間は所属プロとして契約。ツアープロとして、レッスンプロとして、腕を磨く環境を提供するようになった。
そのため、「次第に所属プロが増えて、現在は9人おります」という。
一方、ゴルフ場グループでは、アコーディア・ゴルフは利用者にレッスンのできるプロを、今後、各コース(全120余)に1人ずつ配置したいとしている。「現在、契約プロは約60人です」(広報室)というから倍増させる動きだ。
また、かつては有名ツアープロが所属していた太平洋クラブでは、「ゴルフスクールを展開しているため(コース内スクールも含め、全7カ所)、そこで教える所属プロは増えています」(広報室)という。
クラブによって所属プロに求める役割は異なるが、全体的に所属プロを増やす傾向になるとすれば、何かと競争、浮き沈みの激しいプロにとっては歓迎すべき動きとは言えるだろう。
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