今年1月に発売されたばかりの外ブラニューモデルで定価の6割引きの衝撃価格も。急激に進んだ円高の後押しで一段とお買い得感の増した並行輸入クラブが注目を集めている。価格崩壊の感すらある動きに、発売元や、ショップの対応は?
テーラーメイドの09年モデル『バーナー』ドライバーが1本2万3800円(日本仕様のメーカー希望価格5万8800円)、タイトリスト『909D2』『909D3』が3万7800円(同6万6150円)。
さらには日本で発売前のキャロウェイ『ビッグバーサ・ディアブロ』に2万9800円(同5万4600円)。
例に挙げたのは都内を中心に実店舗を展開するほか、オンラインショッピングも手がける有名ディスカウントショップの値付けだが、このところの円高ドル安を背景に並行輸入クラブの価格は全体的に下がっている。
国内正規品の実勢価格に比べて5割から4割も低い価格は大いに魅力的に映るが、正規品と並行輸入品では仕様やアフターサービスに差異があることだけは頭に入れておきたい。
「一番の違いはシャフトです」、こう解説してくれたのは、かつてテーラーメイドで開発責任者を務めたクラブ設計家の高橋治氏。「同じレギュラーでも米国仕様は1フレックスくらい硬くなっています。強度上の問題もあって重量も10グラムくらい重め。そもそも米国のゴルファーは体力があるので道具に頼る必要性はあまりなく、飛ばすことより曲がらないことを第一に考えています。また、米国ではドライバーで1本8万円台の価格帯のクラブは存在しません。
価格に応じたシャフトしか採用しないので、先端の走りとか、低トルクとかいったプラスアルファの性能は期待するなら日本仕様を選んだほうがいいでしょう」(高橋氏)
実際のところ、正規品と並行輸入品の両方を並べる前出のショップによると、
「米国仕様だからどうだとか日本仕様だからこうだとか特別に意識されているお客様は少なくなっている」のだそうだ。
同じ日本仕様でもいろいろなシャフトやフレックスから選ぶように、米国仕様の中で自分に合うスペックがあればしめたものだ。
一方、こうした並行輸入品の流通により「少なからぬ影響」を受けているのがメーカーや一般のショップだ。
「流通を規制することはできないし、米国本社とも協議していますが(並行品の仕入れ先の)米国市場との価格差を埋めることも難しい」(テーラーメイドゴルフ・喜田眞氏)
「価格だけを考えればネット安売りや格安並行物はいいのかもしれませんが、うちはお客さまと対面販売を第一にしてます。こういう信頼関係が大事なのでは」(ゴルフメッセ・飯田毅氏)と、価格競争以上のものを売りにする声も。
日本のカスタマーセンターで保証や修理などのアフターサービスが受けられるのは本来正規品だけのメリットだが、ジーパーズなど並行輸入品に対して独自の保証を謳うショップもあり、「根本的な解決策は見つかりそうになく、並行品が出回るのはそれだけブランド力や商品の注目度が高まった証拠と考えるしかない」(喜田氏)とメーカーにとっては痛し痒しの状態が続きそうだ。
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