グレッグ・ノーマンが、テーラーメイドと契約? 一見ありふれた契約話のようにも見えるが、実はこの話、奥が深い。というのも、ノーマンは、アメリカで2番目に古い用品界の名門・マグレガーの大株主の一人でもあるからだ。そのノーマンがなぜ、のわけに迫った。
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ノーマン、今度はテーラーの看板になる!?
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テーラーメイドのチャック・ブレスト副社長はいう。
「数カ月前に普通の日常的な話をノーマンとしていたんだが、それがいつの間に盛り上がって、話が大きくなった。今はノーマンとの契約の可能性を話し合っている段階だ」
米ゴルフウィーク誌が伝えたところによると、ノーマンはマスターズに向けての調整を兼ねて、今週のヒューストンオープンからテーラーメイドのアイアン、ウッドを使用し始める模様とか。
今春のオーストラリアで開催されたジョニー・ウォーカークラッシックでも、ノーマンはテーラーメイドの新しいR9を使用していたということだが、それが契約となると、話が大きく変わってくる。
いよいよ、ノーマンが自分の会社でもあるマグレガーに見切りをつけた、ということにもなるからだ。
実は、アメリカのマグレガー社が売りに出されているという話は、1月ごろから出ていた。同社は、すでにアパレルの「グレッグ・ノーマンコレクション」を手放し、昨年末には100パーセント子会社であったマグレガージャパンの株を日本サイドに売り渡している。
マグレガーは今年に入ってからは、PGA用品ショーの出展をドタキャンし、新製品もアメリカでは発表していない。会社の経営陣は退職する一方、パターデザイナーのボビー・グレースも会社を去っている。さらには在庫処分が行われているということで、かなりの末期症状だった。
実際、当初169ドルで売られていたボビー・グレースのパターが、今では3分の1以下の49.88ドルで売られているという話も伝わってきている。
「私たちはこれ以上下がらない最低価格で仕入れている」と販売店のゴルフウェアハウスのマーク・マーニー社長が語るように、米マグレガーは在庫を売り払っているようなのだ。
一方日本サイドのマグレガー・ジャパンのほうは、以前から自社クラブを開発し、「昨年末に株を買い取り、独立したのは今年からですが、今では完全に自立しているため、まったく影響がない」(財務担当・榊原氏)状態となっている。
むしろ逆に、アジアでの販売権を手にしたのと、これまでアメリカに支払っていた“上納金”がなくなったことで、活気づいているほどなのだ。
ただ、ノーマンのほうにも事情がありそうではある。
クリス・エバートとの再婚に関して、オーストラリアのテレビインタビューに出演した際、ローラ前夫人に「1億ドルの離婚慰謝料を支払った」ことを明らかにしたのだ。1億ドルといえば、円高の昨今でも96億円にもなる巨額。やはり、ここはせっせと働かなければならない、ノーマンの懐事情もあるのだ。
ノーマンは、2月末にメキシコで開催されたマヤコバクラシックのプレスインタビューにもコース設計者として顔を出していた。この大会は、WGCの裏試合とはいえ、普通なら開催コースの設計者といえども、トーナメントの最終日にプレスインタビューに出てくることはまずない。
ノーマンはそこで、コースのあるメキシコのカンクンリゾートを自画自賛。この地域でさらに大規模なゴルフコース開発を行う計画とかで、マスコミが集まる最終日にスタンドプレーよろしく宣伝をしたくてやってきたということだ。
つまり、それだけ今のノーマンは、サイドビジネスに必死ということなのだ。
ノーマンが現役でバリバリの時なら、自分でマグレガーの立て直しを図ったのかもしれないが、今の彼にはその力はなさそう。昨年の全英オープン3位の資格でマスターズの招待状を受け取った今が、最後? のクラブ契約のチャンスともいえる。
ノーマンと同じオーストラリア出身のG・オギルビーは、「いくら自分が勝ってもノーマンにはなれない。彼にはカリスマ性がある」と語っていた。テーラーメイドにすれば、そのカリスマ性が欲しいのだろうし、それがちょうど、ノーマンの懐事情と折り合ったということなのだろう。
ここしばらくは、ノーマンから目が離せない。
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