2010年から導入されることが決まっていた「クラブフェースマーキングの新規則」(アイアンの溝規制)について、『現行モデルの生産期限』が1年間延長されることがR&Aから通知された。いわば執行猶予。そのわけは何か?
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フェースの溝規制、今後、さらなる動きはあるか?
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本題に入る前に、アイアンの溝規制について簡単におさらいしておこう。
R&Aは、昨年8月、ロフト25度以上のクラブについて、2010年1月1日から次の新しい規則が適用されると決定した。
(1)<溝の容積率>溝の総断面積を溝のピッチ(溝幅+間隔)で割った値が0.003スクエア・インチ/インチ(0.0762平方ミリ/ミリ)に制限される。
(2)<溝の縁の鋭さ>有効最小半径0.010インチ(0.254ミリ)に制限される。
わかりやすくいうと、ショートアイアンやウェッジの溝を規制することでスピン量を制限し、ラフから打つ場合とフェアウェイから打つ場合の難易度を明確にし、ゴルフのゲーム性や公平性を保つのが目的。
プロのツアー競技やJGAの主催する日本オープンなどでは2010年1月1日から適用を受けると決まっている。
一般アマチュアに関しては25年以降の適用と長い猶予期間が設けられているが、クラブメーカーに関しては09年末までしか現行の高スピンモデルを生産できないことになっていた。
今回の通知は、現行モデルの生産期限を10年末まで1年間延長するというもの。R&Aは、この決定をクラブメーカーから寄せられた意見と現在の経済情勢を踏まえた上での措置としているが、実際のところ、どんな事情がR&Aを動かしたのか。
ルール適合モデルの生産が2010年1月1日には間に合わないためと指摘するのはクラブ設計家の高橋治氏だ。
「適合モデルは確かにできてきていますが、それはコストをいくらでもかけられるプロ用に限った話で、そのまま市販するとなるととんでもない価格になってしまいます。生産技術がこなれてコストが下がるにはまだ時間がかかるので、本音ではR&Aのスケジュール通りに事が進めばどうなるかと途方に暮れていたメーカーは多いと思います」
また、適合モデルの生産現場で欠かせない計測機器の開発が間に合っていないこともある。「計測器は1000万円以上もするので大メーカーしか導入できません」(高橋氏)
フェースの反発を調べるペンデュラムマシンのように中小零細メーカーでも購入可能な計測器をR&Aが開発しなければ、それこそアンフェアな状況を招きかねないというわけだが、一般ユーザーには、「準備期間が長くなったことで、より性能のいいクラブが使える可能性が増える」(SRIスポーツ・山田昭郷・広報部部長)ということもある。
1年間の延長により適合モデルの性能が向上し、価格も下がるのならばありがたい話と受け止めるしかない。
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