アラフォー世代には、入門クラブが『ゼファー』だったという人も多いだろう。15年前、当時の国産ブランドとしては低価格で売り出され、累計300億円近くを売り上げたヒット商品が、ドライバーで実勢2万円を切る思い切った価格で復活した。これに対して市場の反応は――。
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4月17日、 実勢2万円を切る価格で発売されたゼファー
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ミズノのクラブの中で、常に時代を反映した価格戦略をとってきたのが『ゼファー』だ。バブル後の94年に発売された初代モデルは、バブルで価格が吊り上がった多くのクラブを尻目に、ドライバー1本5万円台で登場し、エントリーユーザーやエンジョイゴルファーの市場を開拓した。
今年の『ゼファー』は、さらに価格を下げ、メーカー参考上代1万9950円に設定されている。このほか、バラ売りのアイアンは同6825円で、1月に発売されたマルマン『ベリティレッドV』とほぼ横並びだ。
『ゼファー』をカタログモデルとして復活させた狙いは、「新製品購入に二の足を踏んでいる“休眠ゴルファー”の掘り起こしと、カテゴリーにこだわらずシェアの奪回を図ること」(ミズノ広報宣伝課・西田維作氏)にある。
メーカーが想定するライバルは、中古クラブ、年度落ちのマークダウン品、並行輸入品。
元の価格が数倍もするクラブに商品力で対抗するため、ドライバーは4ピース鍛造チタンヘッドなど上位モデルと同等の造りを採用しているが、ユーザー側からすれば、量販店などのプライベートブランドや下請けメーカー直売クラブも比較の対象となる。
「お客様は、店頭の販売価格が同じだとしても、元の価格が商品の価値だと考えます。一方、低価格品を求める人には素材や造りの違いは伝わりにくい」(二木ゴルフ商品部・北條圭一部長)というように、頭と足下を強力なライバルに押さえられたこのカテゴリーでは、苦戦も予想される。
しかし、ドライバー実勢2万円弱の『ベリティレッドV』が発売3カ月間で目標に対して140パーセントの売上げを達成するなど、潜在的には需要がある。
「色々なクラブが出てくればゴルファーの裾野拡大につながるのは確か。うちとしてはいいと思います」(マルマンゴルフ広報・桑木野氏)
『ゼファー』の後、さらに追随ブランドが続けば、カテゴリー自体の認知度が高まり、市場が拡大する可能性は十分ある。
「去年のうちに各社のフラッグシップモデルが出尽くしたため、肝心の2月、3月の店頭では後から出てきた5万円台の商品が売れ筋になりました。付加価値商品のテーラーの『R9』ですら逆に価格を下げてきた状況で、一度落ちた相場を上げるのは難しい」(前出・西田氏)
大幅なマークダウンが当たり前のようになっている現況は、いずれユーザーの不信感を招く可能性もあり、決して健全とはいえない。
この機会に、業界全体でクラブの適正価格について考えてみる必要がありそうだ。
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