日を追って状況が変化している新型インフルエンザ感染。成田空港などいわゆる水際での防止活動をすり抜け、この16日に兵庫県、翌17日に大阪府で国内感染者が確認された。その後、感染者数が急激な勢いで増えた(21日現在282人)ことから関西を中心に不安感が社会生活にも影響を与えるまでになった。ゴルフ界にはどんな影響があったのだろうか。
国内感染者が初めて確認された直後から、神戸を中心に阪神地区では自粛ムードが広まり、繁華街の喧騒が消えた。当然、影響はゴルフショップにも及んだ。
兵庫県を中心に11店舗を展開するゴルフギアサージでは、その影響を端的に「売上げが激減しました」(取締役部長・朝日貴信氏)と語る。同社は例年、大型連休中に伸びた売上げが直後にその反動で落ち込むというが、今年はその落差が際立つという。
同社では従来、ショップ販売員の風邪などでのマスク着用は禁止していたのだが、さすがに今回は解禁。すると、ほぼ全員がマスク姿になったという。同じくつるやゴルフも、ショップのスタッフにはマスク着用を指示している。
神戸に本社を置くSRIスポーツでは、新型インフルエンザの発生直後から、感染地域への渡航禁止と同地域からの帰国者には帰国後1週間の自宅待機を命じていた。そして、今回の国内感染後は、不要不急の国内出張の自粛を徹底させるなど、事態に応じて対策を強化している。
そのほか関西地区では、大手アパレル系企業主催のコンペが相次いで中止されたり、学校の臨時休校に合わせ練習場がジュニアスクールを休止するなど、とりわけ営業面で大きなダメージを受けた。
一方、表面的には事態の推移を静観しているツアー競技も、6月に兵庫と滋賀県で3大会(サントリー、リゾートトラスト、プロミス)が開催される女子ツアーでは、「発生直後の事務局会議では最悪の事態に備え、開催の中止から延期、無観客試合まで検討されました。ただ、どれをとっても億単位の被害が出ることですから……」(某大会運営会社)と、一時は胃が痛む日々があったと語る。
しかし、その後、今回の新型インフルエンザが“弱毒性”で季節性と変わらぬことから、関係各省、自治体の対策も落ち着いたものになった。
先週の中京テレビ・ブリヂストンでは感染予防として会場内に手洗い用の消毒剤を設置し、関係者用に2000枚のマスクを用意するなどの対策はとったが、競技運営は通常通り。
日本女子プロゴルフ協会では、先週初め「大会の予定通りの開催と、今後は事態の進展に応じて主催者と相談、関係各省等の指導に応じて適切な対応を行う」ことを発表した。
また男子の日本ゴルフツアー機構も「各選手に、体調管理の徹底を呼び掛け、海外に渡航する場合はその予定の提出を義務づけました」(小泉直会長)という程度で大会開催についての言及はない。
アマチュア競技団体も関西ゴルフ連盟で、今月27、28日開催の「関西女子アマ決勝競技」が競技後の懇親会を取りやめた(19日に決定)他に、大きな動きはない。「競技中止や延期となれば、地区のゴルフ場の営業に大きな被害を与えますから」(関東ゴルフ連盟事務局)と慎重に対処する構えだ。
21日には、関西圏だけでなく、東京、神奈川でも感染者が確認された。ウイルスが強毒性に変異するリスクもあるというが、このまま季節性のレベルでとどまり、社会生活に新たな影響を及ぼさないことを祈りたい。
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