このご時勢にも関わらず、ドライバーよりも高価格なシャフトが売れている。気になる価格は、最高で1本10万5000円。材質は高品質カーボン繊維を使った“超高弾性”型。いったいどんな人に合うのだろうか。
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ランバックス・バンブー1本10万5000円。これでも飛ぶなら安いもの!?
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『ランバックス・バンブー』は(株)ムジークとフジクラのコラボレーションから生まれたシャフトだが、今年のゴルフフェアでお披露目されるや否やその価格に注目が集まった。最近の売れ筋シャフトは4万円台だが、その2倍以上もするシャフトを一体誰が買うのか。
しかし、蓋を開けてみると、「月100本を計画していましたが、4月20日の発売から1カ月で160本売れました」(ムジーク・吉本宇志社長)とすでに1カ月の受注を抱える。
好スタートを切れた理由について吉本社長は、「新しいドライバーを買っても、リシャフトしたりすれば、10万円を軽く超えてしまいます。
SLEルール以来、ヘッドで飛ばすのが限界とわかってきた人がシャフトにお金をかけるようになったのでは」と分析する。
1本10万5000円というシャフト単体としては飛び抜けた価格も、プラスに働いている。「価格が性能に対する期待感を呼んでいるのでは」(吉本氏)
市場に溢れる数多くのシャフトの中でも『10万円のシャフト』というワンフレーズは確かにインパクトがある。
尾崎兄弟、高橋竜彦らトッププロにも愛用者が多いクレイジーの主力商品『クレイジーブラック80』も7万8750円という高価格ながら、上級者を中心に人気を集め、同社は設立3年目の売上げが初年度の25倍に達する急成長を続けている。
この2つのシャフトに共通しているのは、それぞれ70トン、80トンの超高弾性カーボンシートを使用しているところ。弾性とは、簡単にいえば、変形した物体が元の形に復元する力のことで、弾性率の大きいカーボンほど、しなり戻りが速く、弾きのいいシャフトになる。
しかし、80トンカーボンシートの仕入れ原価は、一般的な24~30トンのものに比べて5~10倍と非常に高価。シートを巻き付ける作業は、熟練職人しか行えないため、大量生産ができない。
ちなみに、高弾性カーボンは、カーボンシャフトの初期の頃から使われていて、その草分けは本間ゴルフのパーシモンクラブに付いていた『バイオレット』。
このシャフトは、「カーボンは非力なゴルファー向き」という当時の定説を覆し、プロや上級者にカーボンシャフトを普及させるきっかけとなった。
ひと昔前は、超高弾性カーボンシートを使用することでトルクを抑えたハードヒッター仕様だったが、最近のものは平均的なヘッドスピードのゴルファーでも十分に使える。
「全長に超高弾性カーボンを使用することで、切り返し時の癖がなく、振りやすいのが特徴です。とくに『ランバックス・バンブー』は柔らかく感じるほど。試打して明らかに飛べば、例え10万円でもお客様は出します」(ゴルフショップエイコー・伊海田匡弘店長)
このほか、コンポジットテクノ社が5月11日にこちらも80トンシートを採用した『ファイアーエクスプレス』(1本5万7750円)を発売するなど、超高弾性がシャフト選びのキーワードの一つとなりそうだ。
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