サントリーレディスでプレーオフに敗れ、初優勝を逃したが、中国出身のママさん選手、叶莉英(イエ・リーイン)は多くのファンに「また1人、強力な外国人選手が」との印象を与えた。今まさにジャパニーズドリームを掴みつつある叶莉英とは、一体どんな選手なのだろう。
|
ハングリー精神のかたまり、日本で勝つ日も近い!?
|
叶莉英は1978年11月7日、中国・福建省生まれの30歳。彼女を日本に呼び寄せ、日本での親代わりになっているのが、帯同キャディも務める高岸佳宏プロ(51歳)。
もともと高岸は96年から約5年間、中国・大連市でゴルフ場や練習場の開発、運営に携わり、あわせて中国人プロの養成にも取り組んでいた。
その最中の2000年頃、たまたま訪れた上海の練習場で見かけたのが叶莉英だった。
「とても力強い球を打っていたので、もしプロになりたいのなら、僕が大連でやっている練習場にいらっしゃいと声をかけたんです」(高岸)
さっそく弟子入りした彼女はすぐに中国のプロテストに合格する。そして、高岸が日本に戻った01年からは、中国女子の先駆者として米ツアー挑戦。
しかし、「コテンパンにやられて2年ほどで撤退し、その後はアジアや中国の小さなツアーでプレーしていたようです」(高岸)
04年にアメリカ時代に知り合ったシンガポール系アメリカ人のリック氏と結婚。06年には長男・ニコラス君を出産する。その彼女と高岸が再会したのは昨年のこと。
5月に開催された男子ツアー戦の北京オープンの運営協力で中国を再訪した高岸のもとを、かつての弟子たちが「先生!」と挨拶に参じたのだ。
そこで高岸は叶莉英に日本ツアー挑戦を提案。
すると彼女はわずかばかりのお金を持って来日し第1次QTから受験。そして、ファイナルQTを46位という、10数試合は出られそうな位置で通過した。
ところが、開幕戦こそ予選を通過できたが、その後は連続予選落ち。「お金がどんどんなくなって、何日間か車の中で寝たこともあった」と高岸。
しかし、4試合目ライフカードレディスでは9位タイの好成績。その後もリゾートトラストでは最終組。サントリーではプレーオフに残る活躍。そのサントリーレディスで目標でもあった、来季の賞金シードの目安となる賞金1600万円を突破した。
実はその最終日の午後、上海から夫のリック氏が来日、関西空港で午後4時に再会する約束になっていた。
ところが、いくら待っても妻は来ない。途方に暮れる夫の目に飛び込んできたのは、ロビーの大画面テレビの中でプレーする妻の姿だった。
残念ながらテレビ画面の妻は初優勝を逃したものの、ひとつの目標達成に安堵した笑顔で夫を出迎えたのだった。
「確かに荒削りの面はありますが、海外で苦労した経験とハングリー精神があるからなのでしょう。1打も無駄にしないという姿勢が見えます。次の優勝争いでは、きっとチャンスをものにするような気がします」とは、テレビ解説も務める山崎千佳代プロの評だ。
日本選手にはまた1人手強いライバルが登場したことは間違いないようだ。
|