ツアー前半戦で早くも今季2勝をマークして、賞金ランキングトップに躍り出た石川遼。その2勝目となったサン・クロレラクラシックで、石川遼がツアー屈指の難コース・小樽CCを攻略するために考え出したユニークなクラブセッティングが注目されている。
プロゴルファーがトーナメントコースのセッティングや気象条件を考慮して、ロングアイアンの代わりにショートウッドを入れたり、ロフトやバウンスが通常とは違うウェッジを用意したり、大会ごとや日ごとにクラブセッティングを変えるのは珍しいことではない。
しかし、1本プラスするとなると、セットは14本と決められているのだから、何か1本を抜かなくてはならない。
昨年の日本オープンで片山晋呉は、ユーティリティの4番を入れてドライバーを抜くという作戦で古賀GCを制して優勝したが、サン・クロレラクラシックで石川遼が採用したセッティングも“奇策”と言っても過言ではないほどユニークなものだった。
「2番ホール(407ヤード・パー4)ではティショットに低い弾道の2アイアンを使いたいし、6番ホール(535ヤード・パー5)のグリーンを狙うセカンドでは高い弾道の5番ウッドを使いたいし……」と悩んでいた石川遼。
当然、その両方をバッグに入れるとなると何か1本抜かなくてはならない。そこで14本の中から“ベンチ入り”を命じたのは9番アイアンだった。
ちなみに2番アイアンと5番ウッドの石川遼の飛距離は240ヤード前後とほぼ同じで、違いは弾道だけである。
その決断を下したのは、初日のスタート15分前。ギリギリまで考え抜いての作戦だった。
通常“1本抜く”となるとロングアイアンなど長いクラブがその候補に挙がるものだが、なぜ石川遼は、9番アイアンを抜いたのか。実は今年5月に行われた2日間競技のチャリティ大会で手痛い失敗をしていたからだ。
首位で迎えた最終日、バッグに2番アイアンを入れた石川遼は、3番アイアンを抜いてスタート。
途中で手嶋多一に首位の座を明け渡したが、最終18番パー5でイーグルなら再逆転で優勝という場面のセカンド地点で、「ヒロくん、3アイアン」、「3アイアンは今朝抜いたでしょ」という会話が石川遼とキャディの加藤大幸さんの間であったそうだ。
結局セカンドは4番アイアンで打たざるを得ず、手前に2オンするのがやっとで、手嶋に優勝賞金500万円を献上してしまった。
石川遼の2番アイアンと3番の番手間の飛距離差はシャフトがカーボンの2番とスチールの3番という違いもあって、およそ25ヤード前後(3番と4番アイアンの差は15ヤード)。
フックをかけるなどでその差を埋めるのには飛距離差がありすぎて限界がある。ところが、8番アイアンと9番アイアンの飛距離差は10ヤードほど。チャリティ大会での経験を踏まえて、8番アイアンでフェードを打てば9番アイアンの範囲もカバーできると石川遼は判断したのである。
もちろん9番アイアンを残してPWを抜くという選択肢もあったが、最近の石川遼はアプローチでPWの低い転がしを多用しており、最終的に9番アイアン抜きという選択になったのである。
17歳とは思えないユニークな発想。これから秋の本格シーズン、賞金王争いが楽しみだ。
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