「風の息子」「風雲児」と呼ばれた韓国済州島出身のY・E・ヤン(ヤン・ヨンウン 37歳)が今季最後のメジャー、全米プロ選手権でタイガーウッズを下して大逆転優勝! 韓国での賞賛の嵐とヤンの勝因に迫る。
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世界中の誰もが驚いた。Y・E・ヤン、ニューヒーローの誕生だ!
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韓国全土が沸いている。新聞各紙は1面で大きく報道し、イ・ミュンバク大統領も「アジア人としてメジャー初優勝を遂げて、韓国民の士気をあげた英雄」として直接国際電話でヤンを礼賛するなど、98年にパク・セリが女子メジャー2連勝を達成した時以上の興奮ぶりだ。
韓国マスコミは「ついにタイガーキラーが韓国から誕生した!」と大はしゃぎをしている。
韓国「日刊スポーツ」のチョン・ビョンチョル記者はヤンのゴルフとの出会いをこう語る。
「ヤンは高校を卒業した91年当時はボディビルディングで鍛えた肉体が唯一誇れるものでした。卒業後ゴルフ場で軽い気持ちからボールボーイとしてアルバイト生活を始めてからゴルフに没頭するようになったが、貧しい農家で生まれたヤンは父親の猛反対にあいながらも、反対されればされるほど、ゴルフに対する情熱を深めていきました」
アルバイト生活を経てヤンがプロ入りしたのは97年。その年は8試合に出場、賞金ランクは60位、獲得賞金はわずか590万ウォン(約45万円)だった。99年には新人王になったものの賞金はランク9位で1800万ウォン、生活苦のためレッスンプロへの転向も考えたほどだった。
2003年には日本でJGTOのQスクールをトップで合格、日本ツアーに専念して2勝をあげた。05、06年には各1勝をあげ経済的にも安定した。
06年11月にはヨーロッパツアー、HSBCに招待されてタイガー・ウッズを破って見事優勝を果たす。当時、韓国のマスコミは「タイガー(虎)をとらえた風の息子」と劇的な報道をした。ヤンの出身地、済州島は風が強いことからそう命名されたのだ。
そんなヤンの活躍の裏には先輩チェ・キョンジュとの師弟愛があった。ヤンは日頃から「チェ先輩を見習ってゴルフを始めた」と語っているが、そのチェから、韓国での試合で一緒にラウンドした時に、「お前ならば米PGAで十分やってゆけるぞ」という激励を受けた。
その後ヤンが米ツアーに参戦した後も、「PGAで長く試合をやりたいなら、グリップを改善しろ」というアドバイスを受けた。
「安定性に欠けるグリップをスクェアに変えるというアドバイスだったんでしょう](前出・ビョンチョル記者)
それまで10年近く独学でゴルフをしてきたヤンは、その時はグリップを変えることは念頭になかった。けれどもその後、7試合連続予選落ちという現実を知るに及んでヤンはチェの言葉を受け入れグリップを変えたところ、ボールがまっすぐに飛ぶようになったばかりか、飛距離も伸びるようになった。
全米プロの最終日。ヤンは、「14番ホールでイーグルをとった瞬間、うまくいけば優勝できるかもしれないと思った。しかし相手はウッズだし、最後まで気を許すことができなかった。でもこの日は白衣民族(韓民族)の象徴である白のズボンと白いシャツできめて、試合に臨んだ。絶対に勝ってやろうと心に決めていた」と語っている。
普通の選手なら、タイガー相手だったら負けても仕方がないと思うだろう。しかしヤンは違った。「タイガーだから負けたくない」と考えた。そこが韓国人選手の強さの源かもしれない。
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