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週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。
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週刊ゴルフダイジェスト 9/15号
2009/9/4更新
関西オープン「石川遼のOB・
ルールトラブル」の真相を追った!

 2週間前に宝塚CC新コースで開催された関西オープンの石川遼の『OB』問題だが、各種の報道でもいまひとつわからない部分が多い。「5」で上がったのに、最終的には「+2」の「7打」とされたことについて、一部には疑惑報道や誤報とされるものもあった。この問題の真相を解明すべく、取材をしてみると、新たな事実が浮かび上がってきた。


「競技委員の先入観で」(関西ゴルフ連盟)OBがセーフになった。これが全ての発端だった

 まず、簡単にこの出来事を振り返ってみよう。

 石川遼の11番ホール(303ヤード、パー4)のティショットは左に曲がりOBの恐れがあったので暫定球を打った。

 最初に打った球の地点に近づく過程で石川は、競技委員から「はっきりと『1打目はセーフ』と言われたので、当たり前のようにプレーをしてしまった」(石川遼)という。

 つまりその球がOB杭の内か外かの確認を自分でせずに「2打目」として打ち、このホールをボギーの「5」で上がった。

 その後ギャラリーから、あれはOB杭の外側の球だったという証言が出た。石川遼はアテスト前に競技委員と共に現場に行き、件の『2打目』がOBから打たれたものであったことを確認した。

 石川遼はこの時点で「自分がOBにある球を打ったのは事実で、自分は失格だと思った」と言う。つまり、誤球を打った場合は次のティショットを打つ前に2ペナを払って正球を打ち直さなければならなかったのに、そのままプレーをしたので本来なら「競技失格」となる。ところが、この件については石川は「無罰」となった。

 では、なぜ石川遼は無罰となったのか。関西ゴルフ連盟は、この時の競技委員の「1打目はOBではない」という指示は誤りだったと認め、ゴルフ規則の裁定集の「34-3/3.7」により、『審判がセーフと言ったのだから、誤った球を打ってもプレーヤーには罰がつかない」という考えから、石川遼は無罰と裁定を下したのである。

 ただ、当日その場に居あわせた記者を含めて、この裁定に合点がいかないという意見が方々から出てきた。

 今回の「石川遼無罰」の裁定に関する疑問とは、概ね次のようなものであった。

(1)人気のある石川遼に対する特別の配慮があったのでは。

(2)本来、ゴルフのプレーでは自己責任が大前提のはず。OBの有無の確認を怠った石川遼が罰を免除されるのはおかしい。

(3)裁定の「34-3/3.7」を適用したなら無罰のはずなのに、11番ホールの石川のスコアが、本来の「5」から「7」に変更された理由は何か。

 その3項目について検証をしてみよう。

 ルール研究家のマイク青木氏は(1)と(2)についてこう言う。

「競技委員の誤裁定によりプレーヤーが誤球をプレーをした場合は、プレーヤーは誤球をプレーしたことについての罰は受けることはない。これはルール上の常識であって、石川遼くんだから許されたということはありえません。また現場で競技委員の裁定がなされた場合、プレーヤーはそれに従わなければいけない。だから、この点でも石川くんに落ち度はなかった」と断言する。

 次の(3)が今回もっとも問題となっていることである。

 今回、石川遼が誤球の罰が免除されたのは前述の通り、ゴルフの裁定集に照らしてのことで、競技委員が間違った指示をしたことによって誤球のプレーをした場合は罰を課さないというものだ。

 石川は無罰であるから、11番ホールは「5」のはずである。しかし、競技委員会の裁定では「7」となった。これにより翌日の新聞各紙には、「石川遼『2打罰』」という見出しが載った。

 これを読んで「失格」を「2打罰」にして帳尻合わせをしたのかと邪推をする向きが出てもおかしくないだろう。

 真相はこうだ。

「実は、委員会としては『2打罰』という言葉は一切使っていないのです。それに新聞各紙をよく読むと、2打罰ではなく、スコアに2打加えたというような書き方をされているところもありました。恐らく、見出しをつける段階でそれが『2打罰』に変わってしまったのでしょう。ここは間違いのないようにしていただきたい」と関西ゴルフ連盟の三谷賀一事務局長は強調する。

 では、なぜ「5」が「7」になったのか。まず石川遼は1打目がOBの疑いがあったので暫定球を打った。もし1球目がOBだったらその暫定球は3打目という計算になる。

 ところが1球めは「セーフ」とされたが、実際はOBだった。だが、石川は競技委員の指示に従って打ったので、これについては無罰。しかし、いくら競技委員の指示があってもゴルフの原則から考えてもOBから打った球をカウントするわけにはいかない。

「そのまま『5』にしてしまうとOBだったのに、OBはなかったということになってしまう。しかしOBから打った球をないものとすると、石川の11番ホールのスコアは“空白”になってしまうわけです」(前出・三谷氏)。

 そこで、委員会では公正の理念に従って、暫定球3打と、石川がOB区域から打ちカップインまでに要した4打を足して7打としたわけである。つまり、OB区域にあった球と暫定球を同じものとする仮想の状況を作ったというわけだ。

 確かに、石川遼本人が「OBから打ったのは初めてです」というコメントを出しているように、あり得ないことが起こったのだ。そのあり得ないことを何とかしなければならなかったところにこの問題の複雑さがある。

 今回の「誤球」問題について、杉原輝雄に意見を聞いてみた。

「僕は以前から、失格というものはできるだけ出さないことが好ましいと思っています。もちろん重大な過ちを犯した場合は罰則を課すのは当然のことです。そういう意味では、今回の石川くんのケースは問題はなかった。ただ、競技委員の言葉があったにせよ、自分でOBの確認をしなかったというのは、良くない。石川君の将来を考えれば、競技委員と共に、その点は彼も失格と言いたいですね」と苦言を呈している。

 この杉原の言葉を重く受け止めなければならないのかもしれない。

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