クラブフェースの溝に関連する新しい規則が、いよいよ2010年1月1日から、まずはプロのトーナメントで適用される。また、10年以降、新たに市場に出る新製品は、すべて新規則に適合したものとなる。新規則適用まで残り4カ月となったこの時期、プロやクラブメーカーはどのような対応をしているのだろうか。
新しい規則は、次の2つ。1つ目は、ロフト25度以上のクラブを対象に、溝の縁の鋭さを半径0.010インチ(0.254ミリ)以上とする。
2つ目は、溝の容積率(溝の断面積÷溝の間隔)を0.003スクエアインチ/インチ(0.0762平方ミリ/ミリ)以下とするもので、こちらはドライバーとパター以外のすべてのクラブが対象となる。
新規則が適用されるのはカテゴリーでトップクラスのツアーが2010年、日本アマや日本学生などのエリートアマチュア競技で2014年から。
また、一般のプレーヤーは24年まで現行の製品を使用できるが、10年以降に市場に出る新製品は、この規則に適合していなければならない。
R&Aが新規則を制定した目的は、ラフから打ったときのスピン性能に制限をかけてゴルフのゲーム性を高めることにある。
クラブメーカーは、R&Aから最初の提案があった07年2月以来、ルール改正を見越してフェース面の加工(ミーリング)など工夫を重ねてきた。
しかし、「(現行モデルと比べて)ルール適合モデルは、フェアウェイから打ったときは遜色ないものの、ラフから打った場合のスピン量は確実に少なくなります。スピン性能に与える影響は、ミーリングよりも、溝の容積のほうがはるかに大きいからです」(SRIスポーツ・ブランド推進室・佐伯実氏)
なかには、「スピンに頼っていないので去年から適合モデルを使っている」(宮本勝昌)プロもいるが大半のプロはスピン性能の差を実感しているようだ。
「プレーを端から見ている限りではわからないのですが、ほとんどの選手が、ルール適合モデルはラフからのスピンがかかりにくいと言っています」(ブリヂストンスポーツ・イベントプロ企画部・浦邉敏彦氏)
もちろん、現在もクラブの改良は続けられているが、来シーズンの開幕までにラフからのスピン性能が劇的に向上することはなさそうだ。
それならば、少しでも早く慣れておくのが得策と、今シーズンから新ルール適合のウェッジを使い始めているのは、アプローチショットを生命線とする丸山茂樹で実戦でテストを重ねている。
細川和彦は、丸山と同じ理由から、アイアンをルール適合モデルの『スリクソンZ-TX』に換えたが、同時に、「スピンを少しでも多くかかるようにするために」カーボンシャフトにリシャフトした。
しかし、大半のプロは、シーズンオフに移行する考えを持っているようだ。
今シーズン、一大勢力となったクリーブランド勢は、本格的なテストはシーズン終了後を予定している。
「新ルール適合ウェッジは作っていますが、まだプロには渡していません。幸い日本ツアーの開幕は4月からなので救われています」(SRIスポーツ・ツアー担当・奥田正治氏)
とはいうもののウェッジやショートアイアンはスコアメイクに直結するクラブだけに、影響は大きいはず。短いオフの間に新規則適合クラブをモノにできるかどうかで、ツアーの勢力図が塗り変わるかもしれない。
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