先日の日本女子プロ選手権で、異色の注目選手が現れた。日系3世のブラジル人で、プロ入り3年目のマリア・プリシラ・イイダ(選手登録名:飯田マリア、30歳)だ。同大会で3位タイとなり、来季の賞金シード権をほぼ確実にした飯田プロ。身長169センチの恵まれた体格と失敗を引きずらない前向きの性格に将来性を期待する関係者は多い。
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メンタルで変身して、大化けするか?
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来季の米ツアーは男女とも大幅な規模の縮小が心配されている。そのため、特に女子選手の間では日本ツアーでのプレーを希望する選手が増えている。来季以降、国内ツアーの国際色はこれまでのアジア・豪州中心から、より多彩になるのかも。
そうした日本ツアーで、今異色の存在と言えるのが、日系ブラジル人として初めて日本のプロテストに合格(07年)し、先の日本女子プロで最後まで優勝争いに加わった飯田マリアだ。
所属の東海CC(愛知県)によれば、もともと彼女は5歳でゴルフを始め、ブラジルのアマチュア界で活躍後、プロに転向。すぐに米2部ツアーに挑戦したものの、目が出ず帰国。そこで、現在所属の東海CCの関係者の知遇を得て04年に来日し、同CCの研修生となる。当初、日本語をほとんど話せなかったため小学生が通う公文式のテキストで日本語を覚えながらプロテスト合格を目指した。
だが、06年の最初の挑戦は失敗。そこから指導に当たった並木一雄プロは、「最初に見たときは、どこか不安気に打っている印象がありました。ただ、やる気は伝わってきましたね。プロテストに受からなければブラジルに戻るしかないから切実だったのでしょう。実際、どんなに厳しい練習にも素直についてくる子です」と語る。
並木プロによれば、すぐにプロテスト合格のレベルに達したが、彼女は性格的に周囲に気を遣いすぎるという。そして、その“弱さ”は07年のプロテスト合格後も引きずっているという。
「プロなんですから、試合中は自分のことだけ考えればいいのに、応援に行くとずっと僕らのほうを気にして笑顔で応えてくれるんです。大事な場面でも周りのプレーヤーに気を遣って、ペースを乱さないようにあっさりとパットをしてミスしたり」(東海CCのスタッフ)という声も。
勝負に徹しきれない弱さについては、並木プロも「周りの人たちに支えてもらって今日があるという気持ちが強いようです」と認める。今後はドライバーの飛距離アップ(現在は平均240ヤード前後)とともに、この点を強化したいと語る。
「確かに勝負どころでのプレーの仕方はもっと経験を積む必要があるでしょうね。それとパットのストロークがアウトサイドインに入る傾向があると思います。それでも素質の高さは間違いありませんし、あの前向きで明るい、爽やかな性格はプロ向きですよ」(山崎千佳代)
図太い神経を備えたマリアの変身する日を楽しみに待ちたい。
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