紆余曲折の末、会社更生で再建中の東千葉CC。どのスポンサー候補を支持するか、会員にアンケートが実施され、会員の支持が最も高かったオリックス・ゴルフ・マネジメント(略称OGM)がスポンサーに内定した。過去、会員に事前に開示されることなどまずなかったスポンサー選定のプロセス。会員にとって極めて透明な進行となった事情とは?
昨年の関東倶楽部対抗の優勝ゴルフ場としても知られる東千葉CC(36H)がロイヤル航空系のJGMなるスポンサーを擁し、民事再生手続きの開始を申し立てたのは昨年1月。だが、一番抵当権者であるゴールドマン・サックス(以下GS)系ファンドが、その3カ月後の昨年4月、会社側の民事再生に対抗し、債権者申立で会社更生手続きの開始を申し立てた。
民事再生は申立会社自身の経営者が留任するなど、かなり会社側に甘い。例えば、大田区の町工場のような、その会社の社長の頭脳や技術がその会社が持つ最も価値ある資産で、社長本人をクビにするのは合理的ではなく、社長本人も極めて誠実、という前提で、迅速な再建を実現するためのものだからだ。
その民事再生がゴルフ場でも使われた場合、経営者に不信感を抱く金融債権者や会員が、対抗手段として、経営者をクビにできて手続もより厳格な会社更生手続を会員が申し立てるケースが出てくるようになった。清川CC(神奈川)や浜野CC(千葉)はその代表的な例だ
東千葉についてもGSが会社更生で対抗したところまでは、さして珍しい話ではなかった。その後にJGMがGSの一番抵当権を買い取ることで収拾が図られ、昨年7月、再生計画案は無事認可決定を受けた。
ところが、その間JGMには韓国系のサイカンという資金スポンサーがいて、JGMとの間でトラブルが発生。サイカンがJGMへの資金提供を拒み、再生債務の履行が不能となり、今度はJGMが更生手続の開始を申立てるという異例の事態に。
改めてスポンサーに立候補したサイカン、OGM、2大外資の一つPGMの3社の支援金額は、それぞれ80億円、39億円、20億円。退会希望会員の支持はサイカンが一番だったが、継続会員はOGMを支持。混乱を招いたサイカンへの不信感が、金額では劣るOGMを選択させたのだろう。更生管財人の綾克己弁護士は、その継続会員の意志を尊重し、年末までに更生計画案を練る。
ゴルフ場問題に詳しく、同CCの会員でもある西村國彦弁護士も、
「ゴルフ場のことは会員が決めるべし、という考えが全うされた」
と、今回の結果を評価する。
もっとも、綾弁護士がアンケートを実施したのは、「紆余曲折があり、会員の意見を事前に慎重に聞く必要があると考えた」(綾弁護士)からで、あくまで東千葉の特殊事情を考慮してのこと。申立会社側で主導する民事再生はもちろん、会社更生でも、今後も事前アンケートの実施はほとんど期待できない。
とはいえ、会員を翻弄させた最悪の進行が、会員にとって最も透明度の高い手続となったことは喜ぶべきことだろう。
|