85年の歴史を持つスチールシャフトのトップメーカー、トゥルーテンパー社がこのほど米国で民事再生法に相当する「チャプター11(イレブン)」適用を申請した。同社の看板商品であり、タイガー・ウッズ、石川遼らトッププロが使う『ダイナミックゴールド』や『プロジェクトX』の行く末はどうなるのだろうか。
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GDツアーイシュー(左)が12月より限定発売、軽量GS85も発売された
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同社が申請しているのは、連邦破産法第11章(チャプターイレブン)に基づく処理手続き。これは、債務者が自ら再建計画案を作成するプリパッケージ(事前承認)型の手続きで、日本の民事再生法に相当するもの。したがって裁判所への申請の前に債権者および主要株主と同社の間で今後の再建計画について合意書が交わされており、その要点は2つ。
一つ目は、2億7500万ドル(約250億円)の有利子負債を3500万ドル(約30億円)まで削減すること。二つ目は、現株主の投資家から7000万ドル(63億円)を調達し、それを返済の一部と事業投資に充てるというものだ。
本業では数十年間黒字経営を続けてきた同社が、なぜ巨額の債務超過に陥ったのか。業界内では「トゥルーテンパーとライフルの両ブランドでシェアを食い合ったのではないか」(シャフトメーカー関係者)、「納期遅れや品質面など問題があった」(クラブ工房)、「クラブが売れないなか、同社の業績が下がるのも当然」(クラブメーカー関係者)といった様々な見方も出ているが、その真相は事業拡大路線の失敗によるものといえそうだ。
トゥルーテンパー社は、7年前にグラファロイ社、昨年にはプレシジョン社を買収するなどM&Aを展開する一方、中国シャフトの専用工場を建設するなど投資を行ってきたが、こうした積極的な財務戦略が裏目に出た格好だ。
「M&Aや設備投資のための借入金が膨らんだところに、リーマンショックで市場が急激に冷え込んだことがチャプターイレブン申請に至った要因です」(トゥルーテンパーインクジャパン代表・成田修氏)
裁判所の承認は30日から45日の短期で下りると見られているが、その後はすべての事業を今まで通り継続する計画という。「新たな資金調達ができたことで、品質管理や生産設備への投資が可能となる」(成田氏)と、日本サイドとしては今回の事態をむしろ前向きにとらえている。
「『ライフル』の買収により前年度は過去最高の売上げを記録し、今年8月以降の売上げはリーマンショック以前の水準に戻っています」(成田氏)
また、石川遼も使うシャフトと同モデルの『ダイナミックゴールド・ツアーイシュー』が12月より発売されるほか、軽量シャフトのニューモデル『GS85』が『ツアーステージV-iQ』に初めて採用されてデビューする。
これで、雨降って地固まるの諺のように足場が固まり再スタートとなればいいのだが。
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